249『情報収集』
夜は宿に帰って、隠れ家にてポーションの調合をする。
薬種ギルドで思いがけなく高値で売れたポーション……初級ポーションでも一本金貨40枚で売れた。
あまりにも高騰しているので理由を聞いてみたら、腕の良い薬師である貴族(爵位などを持たず市井に紛れている純血の者を含む)が減っていて、中々ポーションが手に入らないらしい。
今回ジェラルディンから限界まで買い込もうと資金を用意しようとしているようだ。
その薬種ギルドにジェラルディンは爆弾を投下した。
サンプル代わりに中級ポーションを一本渡したのだ。
その途端、鑑定士は腰を抜かしたように椅子から転げ落ちた。
同席していた受付嬢はその瓶のラベルに【中級ポーション】と記されているのを見て固まっている。
騒ぎになる前にそそくさと薬種ギルドを退出してきた2人は、そのまま宿に帰ってきた。
そして夕食の後、影空間の隠れ家でポーション作りに勤しんでいた。
明日は薬種ギルドだけでなく、商業ギルドや冒険者ギルドにも売りに行こうと思っている。
「こんにちは」
串焼き屋で各串30本ずつの大量買いをしたジェラルディンは、次はケバブ屋にやってきていた。
「いらっしゃい、お嬢さん。
どうにかマスタードを手に入れて作ってみたんだ。
どうぞ、食べてくれ」
手早く作ってくれたケバブロールは手が汚れないように葉っぱで包まれている。
「そう、やっぱり粒マスタードは無理だったのね。
……いただきますわ」
見た目の具は昨日と変わらない。
だが味付けが微妙に薄くなっている。
そこにマスタードが効いてとても美味しくなっていた。
「とても美味しゅうございました。
きっと大人気になると思いますよ」
「ところで先ほど耳にしたのですが【当たり屋】というものが出没しているようですね。
私、初めて聞いたのですがご主人はご存知?」
ただでさえ厳つい顔が、子供が見たら泣き出しそうなくらいに引きつっている。
「あいつらは……害虫だ。
俺もここらの屋台の連中はみんな被害を被っている」
聞いてみると店の商品を盗むのは当たり前、売り上げを盗まれたこともある。
酷いグループになると場所代を払わなければ屋台を打ち壊す連中もいるという。
「あんな奴らを野放しにするなんて間違ってる。
何度も陳情してるんだが」
これ以上は領主への非難になるのでやむなく口を閉じたようだが、主人の憤懣は納まりがつかない。
「その【当たり屋】とかいう連中はこの町に住んでいるのかしら」
「ああ、下町の外れ、スラムにアジトがあると言われているな。
あそこは憲兵だってそうそう立ち入ることのない場所だ」
「そうなの、昨日は1人捕まったようよ」
「まったく、連中全員お縄にして欲しいよ」
ケバブを削ぎながらうんざりしたように主人は溜息を吐いた。




