244『素材の販売』
「あら、オルトロスの依頼があるわ。
以前にも何処かで卸したことがあるのだけれど、どのような用途があるのかしら?」
大型で頭が2つあるとはいえ、犬である。薬の素材になる部位はなかったはずだ。
「オルトロスは主に毛皮に価値があります。
今からなら今年の冬に間に合いますので、依頼料に上乗せがあるかもしれません」
このあとケルベロスとヒュドラの幼生、双頭のヒュドラも高値で買い取られていった。
「ユニコーンの腱……
確かダンジョン湧きの時にいたような」
異空間収納にはインデックスがあるとはいえ、それは中に入っているものの名がずらっと並んでいるだけである。
思い浮かべれば取り出すことが出来るが、こんなところで出すわけにはいかない。
対して新たに呼ばれてきた鑑定士(貴族の分家、もちろん純血)は興奮を隠せない。
受付嬢とともに主に塩漬け依頼から提示しているが、これまでのところ持っていない魔獣がないほどだ。
「私たちはこのあと商業ギルドに用があるので、続きは明日にしましょう。
解体場に魔獣を置いて、今日はお暇させていただきますわ」
鑑定士は名残惜しそうだ。
「乗り合い馬車の都合では数日滞在することになるかと思います。
おそらく明日はもう少しゆっくりと出来るでしょう」
商業ギルドはロータリーになった広場の向こう側にある。
ジェラルディンはラドヤードとともに馬車に気をつけながら通りを渡っていった。
冒険者ギルドの向かい側、商業ギルドには乗り合い馬車の駅が隣接されている。
それを横目にジェラルディンは、商業ギルドの扉をくぐった。
「こんにちは。
ようこそいらっしゃいました。
本日のご用命を伺います」
受付のカウンターの職員が綺麗な礼とともに出迎えた。
「こんにちは。
まずは乗り合い馬車の予約をお願いしたいと思っています。
行き先は王都です。
それから素材採取の依頼があれば受けたいと思います」
「わかりました。では、こちらへ」
冒険者ギルドと同じように個別のブースに案内されたジェラルディンは、乗り合い馬車の運行予定についての説明を受けた。
「現在、冬季を前にして王都行きの便は増便しています。
ほとんど毎日運行しておりますので、お好きなタイミングでご予約下さい」
そう言って差し出したのは向こう10日間の運行表だ。
「アルベモフから王都サングリアまで、天気にもよりますが最短で12日、15日間ほどみてくだされば確実だと思います」
その条件なら、このアルベモフで多少ゆっくりして良さそうだ。
「では今日にも焦って予約しなくても良さそうですね。
予約の場合はこの商業ギルドで行えばよいのですか?」
「はい、それで結構です」
「次は素材調達依頼を受けようと思っています。
今も冒険者ギルドでいくつか卸してきましたが、できれば一頭丸ごと買い上げてくだされば嬉しいです」
またまた不良在庫がはけそうで、ジェラルディンは上機嫌だ。




