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239『夜明け』

 夜が明けた野営地は惨憺たる状況だった。

 未だ剥ぎ取りが行われていない魔獣の骸があちこちに転がり、ある場所では山になっている。

 50人ほどいた冒険者の中では、死者こそ出なかったがかなりの重傷の者も出た。

 彼らはポーションを使うなどして治療し、だが手持ちのポーションの効能では足りないものもいたのだろう。

 包帯を巻いているものもちらほら見える。


 実は今回、ジェラルディンは皆に知られないところでしっかりと貢献していた。

 サンドリアンが本部となっている幌馬車に向かったのを好機と見て、密かに影に潜み、野営地に向かってきていた魔獣を迎撃したのだ。

 それは単体で向かってきていたのでジェラルディンが対応したのだが、結果的にはそれが吉と出た。

 ……前脚が2対ある、ベア型の魔獣アシュラベア。

 その変異種が野営地に向かって来ていたのだ。


「アシュラベアはたまに見るけど、4つ目は初めて見たわ」


 ベア種はかなり大型なので迂闊に近づかずに、ジェラルディンは距離をとって異空間収納に収納した。

 その後も冒険者たちには強敵になりそうな魔獣を何頭か間引いて、野営地に戻ってきたのだ。

 そしてもしこの間引きがなかったら、この野営地の防衛はかなり厳しくなっていただろう。



「それでは今回倒した魔獣の権利は冒険者の皆さんにあるということで、それでよろしいですな」


 ジェラルディンを含む商人たちは頷き、冒険者たちは歓声をあげる。

 これで解体の士気も上がるだろう。


「主人様、よろしかったのですか?」


「ええ、表向き何もしていないのですもの。

 うふふ、ちょっと行って狩ってきた魔獣の中に珍しい変異種がいてね。

 それだけで私は満足よ」


 タープの下で朝食を振る舞うための準備をしていたジェラルディンは、ウルフ種やゴブリンなどには見向きもしない。


「ラド、使い捨てのお皿とカップ、あとスプーンを出しておいてちょうだい。

 それと……冒険者以外の方には先にお食事してもらえるように声を掛けてきてくれる?」


 今朝はサッと食べやすいように雑炊にした。

 キヌアの雑炊は米と違って水分を吸いすぎることがない。

 この後やってくるだろう冒険者たちが食べる時もふやけてしまう心配はない。


「キヌアの雑炊は初めて食べましたが、結構いけるものですな」


 サンドリアンを始め、商人たちにも好評だ。


「それより、こんなにゆっくりしていて大丈夫なのですか?」


 誰もがもう一夜、この山地に留まるのはごめんだろう。


「昼前に出れば下りきることができます。

 夕刻には麓の村に着きますよ」


 安心するにはまだ早いが、どうやら今夜はゆったりできそうだ。

 そしてもうそこはオストネフ皇国である。


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