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238『護衛vs魔獣の集団』

 大量のサンドイッチやホットドックとコンソメスープが用意され、冒険者たちが交代で夕食を摂っている。

 立ったまま食べやすいように配慮されたサンドイッチを口に押し込むようにして、冒険者たちは空腹を満たしていた。



「……近づいて来ているわ。

 8頭ほどの群れで来ている。

 あちらの方向よ」


 ジェラルディンが指差した方向は真っ暗な闇が広がる森の中だ。

 冒険者たちがそちらに向かって駆け出していく。


「もうすぐ来るわ。ほら、そこ!」


 茂みが揺れて飛び出して来たのはマッドフォレストウルフと呼ばれる魔獣だ。

 この魔獣は群れのボスに率いられ、そのボスはかなりの確率で上位種であるという、冒険者としては会いたくない魔獣だ。


「群れはひとつではないわ。

 まだかなり遠いけど別の集団がこちらに向かって来ているの。

 早く片付けないと収拾がつかなくなるわ」


 サンドリアンが縋るような目で見つめてくるが、ジェラルディンは頷かない。


「ラドヤードにはここにいてもらいます。

 もし2つの群れが合体した時は考えますわ」


 そう言ったジェラルディンには、こちらに向かって集まって来る魔獣らが点として見えている。

 やはりここはそういう場所なのだと、ジェラルディンは改めて気を引き締めた。



 10人、パーティーで言えば2パーティーがひと組で、最初に現れた群れに対応している。

 他のパーティーは野営地を取り囲むように配置されているが、いつでも加勢できるように様子見していた。


「そんな余裕はないわよ」


 まるで打ち合わせてでもいるかのように、冒険者を挟み込むように向かってきている群れは、おそらく同じマッドフォレストウルフであろう。


「んん〜

 聞きしに勝る魔獣ホイホイね。

 きっと魔獣たちには美味しそうな餌に見えているのでしょうね」


 冗談には聞こえないジェラルディンの冗談に、サンドリアンは乾いた笑いを浮かべるしかない。

 その時歓声が聞こえてきて、どうやら最初の群れは討伐されたようだ。


「油断しないで。次が来るわよ」


 一気に5頭飛び出してきたのはフォレストウルフだった。

 何人かの冒険者が押し倒されて、その牙や爪で傷ついたようだ。

 だがフォレストウルフは先ほどのマッドフォレストウルフとくらべるとふた回りほど小型であって、その顎の力も強くない。

 そのかわり、この群れは数が多くて、いつのまにか増えた点は、ざっと数えたところ20は下らないほど増えていた。


「数が心配ですが、まあ大丈夫でしょう。

 問題は第3弾ですね」


「ルディン嬢、それは一体……」


「魔獣の種類はわかりません。

 でも、この動き方は……嫌な予感がします」


 ひとかたまりでやってきた点が2つに分かれ、左右から挟み込むように向かってきている。

 これらがやって来るまでにフォレストウルフの群れを排除したいのだが、それはかなり難しいだろう。


「第3弾は知恵を持つ魔獣のようね」


 それを聞いたサンドリアンが顔色をなくし、その身体を小刻みに震えさせた。


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