233『襲撃→襲撃』
それはジェラルディンが何軒めかの質屋から出てきた時に起きた。
裏通りにあるその質屋の、生活排水を流すための細い水路から、剣鉈を持った男たちが現れて、いきなり襲いかかってきたのだ。
「!! 主人様っ!!」
素早い動きで2ヶ所からの攻撃を受け流し、逆袈裟で1人を切り捨てる。
ジェラルディンの方に襲いかかってきた3人はその胸から、腹から、背中から黒い棘を生やし倒れ臥していった。
だが別の路地からも、まるで何とかという虫のようにわらわらと現れた男たちがラドヤードとジェラルディンに襲いかかっていく。
もうこのころになると生かして捕らえるというつもりは無くなっていて、さながら殲滅戦に移行していた。
「【収納】っ!」
水路沿いから現れた10人近くの男たちの姿が一瞬で消える。
せっかく気分良く買い物をしていたのを邪魔されて、ジェラルディンの機嫌は急降下だ。
「これはさっきの報復かしら?」
布などを巻いて簡単な覆面をしているが、その身なりからさきほどのスリの仲間、スラムの住人だと見て取れる。
「おそらくそうでしょうね。
まったく馬鹿な奴らだ」
こうして貴族を襲ったからには、もう穏便に事を収めることは不可能だ。
スリのことなどジェラルディンはとっくに過去の事で、行政方が何かをいってきても丸く収める自信があった。
しかしこれほど大規模な襲撃事件となると、はっきり言って外交問題になる。
「これだけ派手にヤると、そろそろ騎士団がやってくるでしょう。
撒いて逃げますか?」
「冗談でしょう?
きっちりと始末をつけるのですもの。
ちゃんと代官にも忠告するわ」
スリでは少し動機が弱かったが、もうこうなれば大掃除は避けて通れないだろう。
スラム街と一般区域の境にラドヤードが結界石を置いていく。
深夜なので人通りは少ないが、スラム街はそれなりに動きがあった。
「主人様、終わりました」
「ありがとう。
では始めましょうか」
ジェラルディンの言葉に頷くと、ラドヤードが再び駆け出していく。
一方ジェラルディンは【異空間収納】で音もなくスラム街を消し始めた。
段々と広がっていく更地。
悲鳴ひとつなく、恐怖と虚無が広がっていく。
ラドヤードは、渡された手榴弾を振りかぶり投擲した。
ジェラルディンが彼の投擲力に合わせて調合した特別製で、以前よりかなり強化されている手榴弾だ。
それが着弾した場所は水では消せない焔が燃え上がり、その高温の中ですべてが燃え尽くされて、それが2つ3つと着弾しスラムが焔に包まれていく。
片やジェラルディンの方は着々と更地を増やしていった。




