228『謝罪』
応接室に案内されたジェラルディンは、再び謝罪を受けていた。
だが、貴族であるグロクソンが居る時点でジェラルディンの気分は急降下している。
さきほどから彼は、影の国とジェラルディンの事を気持ち悪くなるほど持ち上げていた。
代官は……言わずもがな、である。
「貴方方の謝罪は受け取りました。
くだんの冒険者にもこれ以上罰を与えるようなことは要求しません。
代官殿の責任云々も追求するつもりはありませんので、この件はお終いに致しましょう」
「ありがとうございます。
慈悲深きお言葉、痛み入ります。
このグロクソン、バラデュール侯爵令嬢の温情、生涯忘れませぬ」
ずいぶんと大袈裟な話だと思ってしまうが、ジェラルディン……王族の気分次第では、こんな町など一瞬で吹き飛んでしまうからだろう。
「わたくしとしては、こちらに非がないということが証明されたのならそれでよいのです」
「もちろんです」
「ではもう帰らせていただきますわ。
わたくし、まだ町を廻って色々見てみたいのです」
伯爵と代官は慌てて引き留めようとするが、ジェラルディンはすでにうんざりしていた。
後ろを振り返りラドヤードを見ると、彼は慣れた様子で椅子を引いてくれる。
「有意義なお時間、嬉しかったですわ」
出された紅茶に手をつけることもなく、ジェラルディンは立ち上がり、この場を去ろうとする。
「お待ち下さい。
是非、ここまでの旅の様子など聞かせていただけませぬか?
そして晩餐を共にと思っております」
ジェラルディンはちらりと後ろを振り返り、冷たい視線を向ける。
「申し訳ないですが、宿に戻ってするべき事があるのです。
好意だけは受け取っておきます」
渋々と玄関まで送る伯爵と代官に見送られ、ジェラルディンは代官屋敷を後にした。
本当に面倒臭い事だ。
翌日、ボドリヤールからの報せで隊商をふたつに分けることになったと言われた。
もちろんジェラルディンたちは先発隊だ。
そう、やっと旅の続きが始まるのだ。
不要
不要




