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22『護衛はハズレ』

 翌朝、昨日のパン屋や市場の店主たちからの押し売りという、嬉しいサプライズがあり、ジェラルディンは上機嫌で停留所に向かった。

 しかし商売人の、好機を逃さんとする執念には恐れ入る。

 完全にターゲットとされたジェラルディンは、しかしぼったくられる事なく追加の食材を得て、特にパン屋の持ってきた惣菜パンの数々に嬉しい悲鳴を上げた。



 停留所には昨日顔合わせをした御者の他に、今回はその助手と思われる青年と、ジェラルディンと旅を共にする乗客が4人、中年の夫婦者と旅の商人、そして地方を回る役人がいた。

 簡単に挨拶を交わし、馬車の中に入ろうとすると、御者と事務員が何やら声を荒げている。


「もう出発時刻だっていうのに護衛の冒険者はまだなのか?!

 ちゃんと依頼は受注されているんだろうな!」


「それは確認済みだ。

 4人のパーティーが1組、おい、あれじゃないか?」


 そのグループは近づくに従って違和感を増していた。

 複数の嬌声も聴こえてきて、その姿も……何というか特殊だった。


『あれは……いわゆる “ はーれむ ”というものでしょうか』


 小説で読んだ事しかないが、おそらくあれがそうだ。

 真ん中の男に腰を抱かれ、媚びを売る女、後ろから抱きつくようにして脇の下から頭を出している女、そしてキスを交わしている女。

 そして三人の女はマントを着けてはいるが、その下にはビキニアーマー……それも極端まで鎧部分を削ぎ落とした露出の激しいものだった。



「やあ、お待たせしたね!

 うちの子猫ちゃんたちの支度に手間取って少し遅れてしまったよ」


 悪びれもせず、依頼主の前でもいちゃいちゃを止める事はない。

 それどころか3人の女たちは「そんなことないわよ〜」と言ってしな垂れかかっていた。


 ジェラルディンは、一目で今回の護衛はハズレだと悟ってしまった。



 馬車が動き出し、ラダの町から遠ざかっていく。

 そんな中、護衛の冒険者一行……軽薄男とハーレム要員たちはろくに監視もせずにいちゃついている。

 あまりの酷さに御者が注意をしたが、何処吹く風。

 反対に「魔獣や盗賊が出没するまで俺たちの仕事はない」と言い返される始末。

 この後は商人と地方役人がそれとなく外を窺って見張りの代わりをしていた。



 そして日が暮れて、野営地での事。

 馬車の乗客たちと護衛一行は別々に夕食を摂り、その後は談笑していたのだが。


 1人だけ見張りに残し、あと2人を連れて早々に引き揚げたハーレム男のテントから、何やら面妖な声が聴こえてきて、ジェラルディンは首を傾げた。


「!!」


 夫婦者の妻の方が真っ赤になり俯く。

 慌てふためいた御者がジェラルディンの耳を塞ぎ、馬車の中に誘導した。

 ……そう、あのハーレム軍団はすぐ側に乗客たちがいるにもかかわらず致しているのだ。


「ーーーっ!」


「〜〜っ」


 2人の女が張り合うように声を上げている。

 それを聞かされ渋い顔をした地方役人が、1人見張りをしている女に文句を言うが何処吹く風。


「見張りは私がしているんだから、あとの3人は何をしていてもいいでしょう?

 私たちは襲撃にさえ対応していたらいいんだから」


 暖簾に腕押しである。


「もしもの時は私たちの身に変えてでも守ってあげるわよ」


 私も早く混ざりたいわ、などと言う。



 そしてジェラルディンと言えば、知識としては教育されていたし、本などではそれとなく仄めかした表現も読んだことがある。

 だが具体的にはどういう行為か知らなかった。


「ルディちゃんはマルタさんとこの奥で休んでくれ。

 ここは狭いが他と区切れるので安心して寝れると思うんだ」


「お心遣いありがとうございます」


 まだ外では、声が聞こえ続けていた。


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