214『質屋』
ある意味、昨日の書籍・文具屋よりも整えられた店内をぐるりと見回したジェラルディンは、ラドヤードを連れてまずは武具の置いてあるコーナーを目指して足を向けた。
「いらっしゃい!
いいのがあれば買ってやってくんな!」
一見、50がらみに見える男が愛想よく声をかけてきた。
「うふふ……ご店主、私たちが質入れに来たとは思わないの?」
「まさか!
俺っちはこう見えても、客を見る目はあるつもりだぜ?
もちろん、お嬢様が “ 売って ”下さるのなら、喜んで買わせていただきますぜ」
「面白い方ね。
……しばらく見せていただくわ。
もし、他にお薦めなものがあるのなら、見せてちょうだい」
店主の彼、サランはこの金遣いの良さそうな少女に関心を持ったが、同時に決して見くびってはならない相手だとも思った。
「へぇ、お嬢様。
どうぞゆっくり見ていって下せえ」
さっそくジェラルディンは武器のコーナーの片隅にあった樽に目を向ける。
そこには無造作に何本もの剣が突っ込まれており、そこから数本を指差してラドヤードに取り出すように言った。
「ご店主、ここにあるのはおいくらかしら?」
「お嬢様、その樽の中のものは屑鉄同様ですぜ。一応選り取り銅貨100枚ですが」
「まあ、そうなの。
地金は良さそうなのにね」
そのまままた何本か選び取り、次のコーナーに移った。
こちらはわかりやすい、絵画や彫刻、花瓶などの美術品だ。
もちろんこの手のものの審美眼も持ち合わせているが、あまり興味を惹かれず、素通りする。
これにはサランも内心で慌てた。
手っ取り早く稼げる美術品をスルーする少女に、ついつい厳しい目を向けてしまう。
「別に真贋を疑っているわけではないわよ?
こちらはまた、後で見させていただくわ」
質屋に持ち込まれるものは、防具武具から宝飾品、魔導具や生活雑貨まで雑多な品がある。
その中からジェラルディンは、生活魔法【鑑定】を使って選び出していた。
サランは【鑑定】こそ持たないがそれなりの “ 目利き ”ではある。
「さて、普段は店に出さない、お薦めの品々を見せていただこうかしら」
カウンターの高さに合わせた椅子を勝手に出して、ジェラルディンは座っていた。
その、わずか1mほど向こうでサランはピクリと身体を震わせた。
「す、すぐに持ってくる」
もうずいぶん前に閉店の札を出して、鍵がかけられている店には他の客が入ってくることはない。
店の奥に駆け込んでいったサランを見送って、ジェラルディンはお茶の時間にすることにした。
「お茶菓子はフィナンシェにしましょうかしらね。
ラドも小腹がすいたでしょう?
一緒に食べましょう」
あっという間にティーセットが現れ、保温効果のある水筒から注がれた紅茶からは湯気が上がっている。
「お砂糖はどうする?」
「今回はこのままで」
サランが戻ってきたのは、ちょうど2人がフィナンシェを口にしているところだった。
「あら、思ったより早かったわね。
お茶を一緒にいかが?」
あまりにもマイペースな目の前の少女に、サランは脱力感が半端ない。
「いや、お嬢様がそう仰るのなら、いただこうかな〜なんて」
「ではどうぞ」
一瞬で目の前に現れたティーカップに紅茶が注がれ、前に置かれる。
サランは奥から持ってきた布包を慎重な手つきでカウンターに置き、そのまま居心地悪そうに椅子に収まった。




