201『マンセの町の商業ギルド』
2日目の夕方にようやくマンセに到着した一行は、その足で商業ギルドに向かった。
3人で業務カウンターに行き、依頼の完了を確定させる。
アルマンにはその場で金貨14枚が支払われ、ジェラルディンたちとはここでお別れだ。
「ルディン様、どうもありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとう」
ジェラルディンはこの後、ギルドが斡旋した隊商の商人と会い、同行を依頼することになる。
ちなみにアルマンは復路の仕事があるまでここで待機だ。
「では、こちらにおいで下さい。
ルディン様が今回同行される予定の隊商ですが、責任者から了承を取っています。
この隊商は国境を越えて【ベルゲンボス国】のバーゲンまで向かいます。
行程は60日を予定していて、ルディン様が最終的に目指しているオストネフ皇国までの接続が一番可能性が高いと思われます」
ギルド側が過去の記録などからはじき出したプランだ。まだしばらくバルヒュット国内の街道を進むようだが、ジェラルディンとしては織り込み済みなのだ。
「はい、それで結構です」
「次に依頼料ですが、今回は行程が長いことでそれなりの金額になります。
お2人で、金貨120枚になりますが……いかがでしょう?」
ラドヤードを見るとゆっくりと頷いた。問題ないようだ。
「それでお願いします」
ジェラルディンは即決し、アイテムバッグから金貨を小出ししている布袋を取り出した。
「この袋一つには金貨が100枚入っています」
ふたつめの袋から金貨を20枚取り出して職員に渡す。
彼女はジェラルディンに見えるように金貨を数え、120枚あることを確かめると依頼書の写しと割符のようなものを渡して寄越した。
「それと……これはこちらが勝手にしたことですが、依頼主が若いお嬢様だとお聞きして、隊商の質は厳選しました」
「お心遣い、ありがとうございます」
ジェラルディンを担当している職員が、心の中で安堵の吐息を吐いた。
見るからに富裕層の令嬢……おそらく貴族の少女に、下手な隊商など紹介出来ない。
「先方との顔合わせは明日、昼一番でいかがでしょうか」
ジェラルディンは快諾し、明日を待つことになる。
「あと、この商業ギルドで素材の買い取りをお願い出来ますか?」
「原則、商業ギルドに登録した者に限られていますが、ルディン様、よろしければ登録なさいませんか?」
冒険者ギルドのギルドカードを持っているので、金貨1枚を支払えば簡単に登録出来る。
ジェラルディンはラドヤードとともに登録することにして、金貨2枚を支払った。
そしてさっそく依頼を受けてみようとしたが、ここには冒険者ギルドの様な掲示板がない。
その事を尋ねてみると、再びカウンターに案内され、ひとりの職員を紹介された。
「彼女が、依頼の受注を仲介するスーザンです。
商業ギルドの依頼は一つに纏められていて、管理されています」
ジェラルディンたちによく見えるように持ち上げられたそれは、厚手の表紙に大量の紙が紐で閉じられたものだった。
「私がご希望を伺って検索します。
どのような依頼をご希望ですか?」
「素材の納品依頼はありますか?」
「もちろん、とてもたくさんありますよ」
スーザンは取り外した依頼票の束を、ジェラルディンに差し出した。




