195『新たなダンジョン』
そのダンジョンは深い森の中、ぽっかりと開いた大きな穴だった。
「間違いなさそうね」
この大きさなら、あのトロールやジェラルディンの異空間収納に入ったままの名も知らぬ魔獣も出てくることができるだろう。
「入ってみましょうか」
ギルドが募集したダンジョン偵察依頼を完全に無視して、抜け駆けしている形だが、ジェラルディンは気にしない。
ラドヤードもジェラルディンとのダンジョン攻略に慣れているので簡単に了承した。
「少しの間我慢して下さいよ」
両手を空けておきたかったラドヤードは、ジェラルディンをロープで固定して背負い、軽いフットワークでダンジョンの穴の中に降りていく。
そこは暗闇の中所々に光苔が岩壁を照らす、自然の洞窟そのもののようだ。
「魔獣の気配がまったくしない。
これは相当な数の魔獣が外に出て行ってる感じですね」
「探査してみたけど、この先しばらくはいないみたいね。
ただ “ 湧き ”があれば遭遇するかもしれないけど」
「ではもうしばらくこのまま進みます」
「では【ライト】」
ジェラルディンの魔法が作り出した灯りがあたりを明るく照らす。
「このダンジョンは緩い傾斜が続いているタイプのようですね。
しかし大きな洞窟だ」
ラドヤードのバスターソードも難なく使える、そんな広さがある。
「ではラド、先に進みましょう」
【ライト】の明かりも届かないほどの奥から現れたのは、このダンジョン最初としてはあまりにも強大な地竜だった。
「こんなのアリかよ!」
すっかり地の出たラドヤードの罵りに、ジェラルディンはもしこれが一般の冒険者だったらと思う。
「あのギルドの冒険者なら全滅もあり得たわね」
地竜の影から無数の棘が飛び出して、その手足に巻きついた。
素材としては逸品であり、何よりも近くで観察して見たかったため動きを奪って近づいた。
「思ったよりも滑らかな鱗なのね」
地竜なので羽はない。
だがその額からはサイのようなツノが生えている。
「あのツノは確か薬の素材になるのね。
いいわね、収納してしまいましょう」
地竜は自らの死にも気づかなかっただろう。
一瞬で収納された後には何も残っていない。
「このダンジョンはこの先もこんな大物ばかりなのかしら?
もしそうならかなり難しいわよ」
ダンジョンは困りものだが同時に利益を生む。
おそらくこの後ワンダイクはダンジョン都市として繁栄していくのだろう。
だがこういった、いわゆるボス級の魔獣は間引いておかねばならない。
「ではどんどん参りましょうか」




