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181『後方陣地』

 自分の目の前に座るふたり……特に魔法士である少女を、メッシーニはしみじみと見つめていた。


 薄茶の髪と瞳の、パッと見は平凡な少女はよく見ると整った顔つきをしている。

 その物腰は一言で言って【上品】

 言葉遣いもていねいでこの町では滅多に見かけない人種だ。

 ギルドマスターであるメッシーニも、あまり魔法士には詳しくないのだが、彼、彼女らが青い血を持つものだとは知っている。


「主人を不躾な目で見ないでいただきたい」


 眉間に皺を寄せ、不機嫌をあらわにしたラドヤードに冷ややかに言われて、メッシーニはその視線を目の前の従者に向けた。

 こちらはまた、見事な体躯の冒険者だ。ただ見た目決して若くない面様は昏い影も併せ持っている。


「これは、申し訳ない。

 ルディン嬢、謝罪いたします」


「気にしておりません。

 そしてふつうにお話しいただいても結構ですわ」


 メッシーニはそれでも警戒してしまう。何しろ相手は、少しでも気に入らないことがあれば、平然と平民を殺す貴族だ。

 こんな可憐な少女でも貴族は貴族。

 警戒するなと言う方がさらに警戒を深めてしまう。


「それよりも討伐対象であるトロールはどの様な状況なのです?」


「昨日派遣された騎士団も思い通りに攻めきれず、一進一退を繰り返しているようです」


 ここでは口にしないが損害もかなりのものに至っている。

 すでに三分の一以上が死亡もしくは無力化されているのだ。

 その士気も下がっている事だろう。



「着いたようですね」


 あたりが騒がしくなり、馬車が揺れて馬が嘶き、そして停車した。

 メッシーニが扉を開けて飛び出して行き、次に降りたラドヤードが差し出した手でジェラルディンを抱き上げ、そのままいつものように抱えてメッシーニを追う。

 ジェラルディンが見回してみると、ここは後方陣地のようだ。

 あちらこちらに疲れ切った兵士が地面に座り込んで項垂れている。


「あの……あの方たちは?」



 心を折られて使い物にならない兵士がこの場に下がってきている。

 負傷の程度は大したことはないが、虚ろな顔からは生気を感じられない。

 思わずジェラルディンは彼らに近寄り、アイテムバッグから出しているように偽装して、異空間収納から使い捨て用に買い込んでいた木製のカップに保温ポットに入った熱々のコンソメスープを注いで渡していった。


「主人様?」


 もちろん、ただ優しいだけの行為ではないとラドヤードは知っている。


「まだ動けるなら戦えるようになってもらわなくては。

 盾くらいにはなるでしょう」


 案の定、熱々のスープを飲んだ兵士たちの目に光が戻ってきた。

 ジェラルディンは次は負傷者が収容されているテントに向かった。

 そこは瀕死の重傷からそうでないものまで、まるで地獄絵図だった。

 ほとんど治療もせず、ただ寝かされているだけの騎士や兵士たちは死を待つのみのものも多い。


「治癒士は、いないのよね……」


 つかつかとテントの中に入っていったジェラルディンはポーションを取り出し、まずは傷にかけ始めた。


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