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170『スミルカンドの町』

 ジェラルディンはもう人、この場合は平民だが、それらとの付き合いは懲り懲りだった。


「なるべく接触したくないわ」


「そんなことを言っても……

 なるべく避けますが、情報は必要ですよ」


 ラドヤードはやれやれと呆れ、それでも最大限譲歩してくれた。

 まず、今向かっている町まで、地図を見た目算では3日ほど。

 彼はいつものように主人を抱え、走り始めた。




「主人様、あれが俺たちが目指している町ですよ」


 クメルカナイを出発して9日目、ジェラルディンとラドヤードは今、小高い丘の上から目的地を見下ろしている。

 そこは教会らしき建物を中心に広がった町であった。


「わ、わかったわ。

 では打ち合わせ通り、被らせてもらうわね」


 ジェラルディンは大きめのローブを着て、そのフードをすっぽりと被って顔を隠している。


「そんなのでは不審がられますよ」


 ラドヤードにからかわれながら町に入るための門に近づき、並んでいた荷馬車に続いて前に進むと、今まで滞在してきた国々とはまったく違う装備をした兵士に声をかけられた。

 その装備はクメルカナイでは鋼の胸当てだったものが昆虫タイプの魔獣の外殻を使った胴鎧を着けている。


「見慣れない顔だな。

 この町は初めてかい?」


 ジェラルディンは少しだけフードを下げ顔を出した。


「はい、主人と俺は冒険者で、各地を旅しています。

 今回はあちらの方から」


 ラドヤードはそう言って丘を指しながら話を続けた。


「森を抜けて来たんです。

 ここは何という町ですか?」


 ラドヤードは簡単な造りの地図を取り出して見せた。これは冒険者ギルドなどで普通に売っている、自分で書き込んでいくタイプのものだ。


「おう……森って、里山の向こうは魔獣の出る端境の森しかないが、おまえさんたち、あそこを踏破して来たんかい?」


「はい、めぼしい道がなかったので」


 兵士たちはドン引きしている。

 里山はともかく、端境の森に入るものなど余程の事がない限りいない。それも今は冬だ。


「そ、そうか、じゃあ身分を証明するものを見せてくれるか?」


 ラドヤードは自分とジェラルディンのギルドカードを差し出した。


「おお、ずいぶん遠くから来たんだな。

 ほら、通っていいぞ。

 ようこそスミルカンドの町へ」


「ここはスミルカンドと言うのですね。この地図で言えばどの辺りですか?」


「ん〜と、ちょっとこっちに来てくれるか?」


 門の裏に机と椅子が置かれた簡易な休憩所のようなところで、ご丁寧にも自分たちの地図を取り出して位置を確認し指し示してくれた。

 ラドヤードはポーチから取り出した携帯用のペンで印をつけ、町の名前を書き込んでいく。


「あと、できれば今夜の宿を紹介してもらいたいのですが」


「おう、いいぜ。着いてこいよ」


 親切にも連れて行ってくれるようだ。

 もう街中なのでジェラルディンも徒歩で兵士のあとを追った。


「なに、ここはそんなに広い町じゃない。

 今日は違うが0と5のつく日はこの広場に市が立つ。

 常設の市は突き当たったところにある通りにあるので覗いてやってくれ。

 あと冒険者ギルドはあそこな」


 指さされた場所には、この町では珍しい3階建ての建物がある。


「あんたたち、冒険者なら顔を出しておいた方がいいだろう。

 宿は、お嬢さんがいるから上等な方がいいな」


 そう言って連れていかれたのは、見た目すっきりとしたこじんまりとした宿だった。


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