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160『思わぬ収穫』

 侯爵邸で入浴を済ませて戻ってきたジェラルディンの手には、夜食の入ったバスケットがあった。

 そしていつもと違うのは、身につけているのが寝間着ではなくゆったりとしたチュニックとレギンスであることだ。


「さあ、今夜はどうなるかしら」



 灯りを落としてうつらうつらしていたジェラルディンは身体に響く振動で目を覚ました。


「あら、はじまった?」


「はい、主人様。

 どうやら結界に体当たりをしているようです」


 ジェラルディンの探査によるとその数は6頭。ゴライアスウルフの群れとしては小さいが、普通彼らと遭遇した場合、冒険者側の生存率は限りなく低い。

 だがジェラルディンたちの場合は厳重で頑強な結界に阻まれ、今、外ではゴライアスウルフたちが周りをぐるぐる回りながら攻め方を考慮中だ。


「まあ私たちはお夜食でもいただきながら、様子を見ましょう」



 ジェラルディンはその後眠ってしまったのだが、ラドヤードは朝まで起きていたそうだ。

 結界への干渉は朝までに止み静かになったが、用心の為ジェラルディンが起きるまで外を伺うのは自重していた。


「そうねぇ、生きて動いているものはないわね。

 結界を解いて外を見て見ましょうか」


 ゲルの出入り口のところだけ結界石を外し扉代わりの布を跳ね上げると、目の前に広がっていた光景に唖然とした。


「これは……」


 ゴライアスの名を冠する価値のある、全長5mほどある赤金色の狼が6頭、結界側に倒れ臥している。

 ゲルの外側の結界石を外して急いで外に出たラドヤードが、狼たちの死体を検分した。


「主人様、これらは6頭中4頭が頸部を骨折して死んでいますね。

 あとの2頭は頭蓋骨の骨折です」


「それって結界に突進して死んだっていうこと?」


「状況的にはそうかと」


 この時、ジェラルディンは閃いた。


「これ、使えるかも!」


 即座に影空間の隠れ家に行ったジェラルディンは、結果的には翌日の夜まで篭って戻って来なかった。

 その間ラドヤードは6頭のゴライアスウルフを自分のアイテムバッグに収納し、夕食はオークを狩って焼いて食べた。

 自分の主人が、ひとつのことに傾倒すると周りが見えなくなるということを、よ〜く知っているので問題はない。

 夜は結界石を配置し、昨夜の再現の中仮眠をして、そして狼を回収する。

 今朝は5頭。これは結構効率的な狩りかもしれない。


 結局、この階層には4日間滞在し、ゴライアスウルフだけでなくアシュラベアも手に入れた。

 この熊は前足が6本あり、とても貴重な熊だった。

 この熊の肝はとある貴重な薬の材料となるので高値で取引されるものだ。



「付き合わせて悪かったわね」


 ようやく28階層から先に進んだ2人だが、今回の攻略速度はゆっくりだ。

 これで結界で狩りをすることに味をしめたジェラルディンが、新たに作成した効果の高い結界石を用いて魔獣を狩っているからだ。


「今までもダンジョンでゲルを出して休んでいたけど、こんなことは初めてね。魔獣たちの行動が変化するような、何かがあったのかしら?」


 クメルカナイのダンジョンは、最深到達階層が更新された為、何かが動き出したのかもしれない。


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