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158『【死の舞踏】の真実』

 24階層に向かう階段の上、その広場になっている空間にジェラルディンたちはゲルから出てくつろいでいた。


「昨夜は何事もなかったようね」


「はい、おかげさまで俺もゆっくり眠れました」


 ダンジョン内に似つかわしくないテーブルの上には標準的な朝食、ポタージュスープにカリカリに炒めたベーコンと目玉焼き、トマトとチーズのサラダ、焼きたてのロールパンがのっている。

 もちろんラドヤードにはたっぷりの量が用意されていた。


「料理長が、いつもラドがたくさん食べてくれるのでとても喜んでいるのよ。

 いつか国に帰る事になったら歓迎するって言ってたの。

 仔牛を丸ごと料理するって言ってたわ」


「それは楽しみですね。

 料理長様によろしくお伝えください」


「ええ、今夜も楽しみにして欲しいそうよ」


 そんないつもと変わらない、朝のひとときは突然終わりを告げた。


「あら、お客様がお出でになったようよ」


 まだ姿の見えない、招かざる客を迎えるため、ジェラルディンは食器の類いを、ラドヤードはテーブルと椅子をしまい、ゲルも収納した。



 ジェラルディンを狙って放たれた矢はその直前でラドヤードに掴みとられ、そのあと続いた矢はことごとく剣で叩き落とされていた。


「とうとう本性を現したわね」


 ジェラルディンの影の中では触手状のものが蠢いて、すでに臨戦態勢に入っている。


 まず姿を見せたのは弓を射た張本人【死の舞踏】の弓師の男だ。

 そのあと続いてイレミアスたちが林の中から現れたが皆、見るからにボロボロだ。


「あら、よく頑張ったわね。

 特に手負いのタンクさん、大丈夫なのかしら」


 徹夜で走り続けてきた彼らは目を血走らせ、鬼気迫る形相で殺気に満ち溢れている。

 ジェラルディンが口にしたタンク職の男も、なけなしのポーションを使い果たして健康体と体力を取り戻していた。


「もう絶対に逃さねえ!

 クソガキと木偶の坊、覚悟しやがれ!!」


 すっかり人格まで変わってしまったようなイレミアスだが、実はこちらが本性だったりする。


「しつこく追いかけてきたわねぇ……

 結局どうしたいのかしら?

 ……やはりあなたたちの本来の目的、いえ習性を満足させる為かしら?」


「そうだな。

 最近はこのダンジョンでもヤりにくくなってきたからなぁ。

 おまえらを最後にして、ここともおさらばだ」


 詠唱の済んだ魔法士から火魔法が放たれ、弓師から毒矢が連続で放たれる。

 それらは直撃したかのように見えたが、結界石によって弾かれていた。


「ふうん、どうしてもやる気なのね?」


「おまえ! どうしてそんなに落ち着いていられるんだ!?」


「あら、ご存知なかったのね。

 私【鑑定】が使えて、最初からあなたたちのステータスに『快楽殺人者』があるのを知っていたのよ?」


 イレミアスを始め、他の者の顔つきもサッと変わる。

 そう、彼らは彼方此方のダンジョンで趣味と実益を兼ねて、目を付けた冒険者を殺しその持ち物や金銭を奪う盗賊だったのだ。

 A級冒険者と言う地位を隠れ蓑に、今まで上手くやっていた。

 それはダンジョン内で冒険者が行方不明になる事がそれほど珍しい事ではないからだ。

 そして弓師などは真性の快楽殺人鬼で【銀狼の咆哮】のリリを殺したのは彼だし、行方不明のままの他のメンバーも、追い詰めてひとりずつ消していったのも彼である。

【死の舞踏】の中でも一番タチが悪いのは弓師なのだが今回は奇襲も強襲も通じず苛立っていた。


「私はね、本来他事に興味がないの。

 あなたたちのことも必要以上に関わるつもりもなかったし、例の『快楽殺人者』に関しても好きにすればいいと思っていたの。

 でも、どうやら私たちを目標に定めたようだし、今回はそれを見極めようとしたのだけど……愚かなくらい思い通りに動いてくれたわね。

 残念だわ。

 このまま何事もなく解散出来たら、あなたたちを見逃してあげようと思っていたのに」


 そう言葉を結んだ直後、ジェラルディンの影から無数の棘が伸び、手足の関節や甲、肩など急所を外して刺していく。

 それはそれほど酷い怪我ではないが、もうほとんどポーションの持ち合わせのない【死の舞踏】にとっては致命傷とも言うべきもので、上に戻るにしても、このまま30階層まで進むとしても多大な試練が待ち受けている。


「さようなら」


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