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141『楽しい晩餐??』

 もうすっかり帰る気になっているジェラルディンが、思い出したように異空間収納に意識を向けた。


「そうそう、何をおいてもこれだけは置いて帰らなくては」


 ジェラルディンはもう、自身の魔法【異空間収納】を隠そうともしない。

 その解体台の上に直接出された魔獣を見て、解体人やバルタンまでが後ろに下がった。


「これが40階層のボス。

 ラドヤードはケルベロスの亜種ではないかと言っていますが……買い取ってもらえますか?」


「もっ、もちろんです!

 こいつは凄い発見ですよ!

 それもまったく傷ついていない!

 凄い、凄いですよルディン嬢!!」


 いつもは冷静なバルタンの、興奮の度合いが凄い。

 これほど喜んでもらえて嬉しくなったジェラルディンは、それではと思って他の見たことのない魔獣を取り出して床に積み始めた。

 ……この日、クメルカナイの冒険者ギルド解体棟は、その発足以来最高の賑やかさとなった。



「もう結構疲れてしまったわ」


 それなのに何故か一緒に付いてくるバルタンは、邪険にされているのに気づいていても、何処吹く風。

 むしろ嬉々として話しかけてくる。


「お疲れなのはわかっています。

 でも私はこの興奮を抑えきれません」


 バルタンという男はこれほど饒舌だったであろうか。

 もう早々に相手をするのを放棄したジェラルディンに代わって、今はラドヤードが質問責めにあっている。

 このままでは家にまで上がり込んできそうだとげんなりしていたが、もう諦めることにする。


「ねえ、おふたりさん。

 家に帰る途中で夕食を済ませない?

 もう私、気力がないの」


 ジェラルディンの提案はすぐさま受け入れられ、その場から近いバルタン行きつけの食堂兼居酒屋に向かうことになった。

 そしてそこでは個室に案内してもらうことが出来て、これでジェラルディンはやっとひと息つくことになる。



 ひとり盛り上がっているバルタンを前に、ジェラルディンは素朴な味わいのシチューを食していた。

 おそらく鶏ガラなどで出汁をとったスープにサイコロ切りした根菜がたっぷりと、肉団子が5個入っている、ボリュームたっぷりのシチューだ。

 味付けは塩と香辛料が少々。

 おそらく肉の匂い消しのタイムやその他と胡椒だろう。

 それのおかげで野性味溢れる肉団子をあっさりと食べることが出来る。

 ここの調理人はかなりの腕のようだ。

 付け合わせには薄パンと、ジェラルディンにはりんごの甘煮が付いていた。

 ちなみに男たちは “ 肉 ”だ。

 おそらく何かの骨付き肉を競うようにして食べている。

 皿に山盛りになっているそれは、見る見る間に嵩を減らしていく。


「ここのお勘定は私が持つから遠慮しないで食べて。

 ラドもその程度では足りないでしょう?

 それからエールもお代わりが欲しいのではなくて?」


 酒精の少ないエールでは、ラドヤードもバルタンもさほど酔いは回らない。

 だがラドヤードは今夜は2杯までと、決めて飲んでいた。



「今日はどうもありがとうございました」


「いいえ、どういたしまして。

 それとバルタンさん、家まで送って下さらなくてもよいのですよ」


「いえ、私が一緒にいたいのです」


 何やらバルタンの発言にヤバいものを感じたジェラルディンはラドヤードの方を見るとかぶりを振られてしまった。

 まさか家の中まで入ってこないだろうと思っていたら、どうやらその気満々のようだ。



「ようやく着いたわね」


 ジェラルディンが鍵を取り出すと、ラドヤードがその手を掴んだ。


「主人様、少しお待ちください」


 ジェラルディンをバルタンに任せたラドヤードは扉に近づき、その扉と枠の隙間に指を這わせている。

 その顔が瞬時に強張ったのをジェラルディンは見逃さなかった。


「バルタン殿、申し訳ないが憲兵を呼んできていただけないだろうか」


 その顔つきと声の様子で只ならぬものを感じたのだろう。

 踵を返したバルタンは駆け出していく。


「ラド、何があったの?」


「主人様、侵入者です」


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