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132『【死の舞踏】の敗北』

「くそっ!

 あいつらどこに行ったんだ!」


 ジェラルディンたちがボスを倒してから2日後、ようやく20階層にたどり着いた【死の舞踏】の面々は、すでに疲れ果てていた。

 冒険者ランクAの彼らでもいささかオーバーペース気味でここまで来ている。


「まさか、もう先に行っちまったって事か?

 それともやられたって事か?」


 このダンジョンの最初の関門、20階層のボスは思ったよりも手強い。

 上級冒険者パーティー推奨だが、ここ何年も攻略者がいなかったということが、その難易度を示しているだろう。


「リーダー、ボス部屋挑戦するつもりか?」


 タンク役の男が不安そうに聞いてくる。彼はこんなところまで潜ってくるつもりはなかったのだ。


「おう、ここでボスを攻略して、俺たちの名を知らしめてやろうじゃないか!」


 頭に血が昇っているのか、恐怖と怒りがないまぜになっているのか、直前にジェラルディンたちがボスを倒しているということを考察出来ずに、仲間たちを鼓舞している。


「でも、ここまで来るのに一杯一杯だよね?

 装備だって十分とは言えないし、帰りだってあるんだよ?」


 パーティーの中の斥候職であり優男が、その見た目にそぐわない慎重な意見を述べる。

 だがイレミアスは皆の意見を無視してボス部屋の扉を開けてしまった。

 心構えも装備もまったく準備の出来ていないパーティーがどうなるか、わかりきったことである。


【死の舞踏】は、このクメルカナイでは有数のAランクパーティーである。

 その実績は十分で、S級に上がるのも間近と言われているほどだ。

 だがいくら強力なパーティーでも、20階層のボス部屋は準備不足で挑めるものではない。

 戦闘開始からすでに押されていた。


「まずはオークロードからいくぞ!

 レッサードラゴンのブレスに気をつけろ!」


 イレミアスの、いたってまともな指示なのだが皆の動きは鈍い。

 オークロードをさっさと倒してしまわなければ、一定時間がたつとブレスが飛んでくる。

 それを避けながらの団体戦は至難の業なのだが、そこは腐ってもA級。

 それなりに捌いてようやく2匹、倒すことができた。

 だがすでにオークロード相手に押されていて、その後の展開は推して知るべし。

 イレミアスはパーティーの消耗状況に撤退の意思を固めた。

 だが、ボス部屋はそうあっさりと逃してくれない。

 全部で5匹、オークロードを倒したところでタンク役の彼がブレスをまともに受けて吹っ飛ばされてしまう。

 引き時だった。

 イレミアスが殿を務め、意識のないタンク役を斥候の彼ともう一人、弓師が肩を貸して運び、這々の体でボス部屋から走り出た。

 ボス戦、失敗である。



 そしてその頃、ジェラルディンは25階層で、夢中になって “ 蛇狩り ”をしていた。


「ラド! すごいわ!!

 全部見たことのない、新種のバイパーよ!!」


 ジェラルディンたちがいつも狩るクリムゾンバイパーなどと違って、見るからに上位種であるバイパーは大きさから言っても違う。

 ジェラルディンはサクサクと異空間に収納していた。


「こんなに上質の蛇毒が採れるなんて、毒無効の上級薬が作れそうよ。

 ……もちろん毒薬もね」


 その時ジェラルディンの探査に今までなかったような反応が現れた。


「主人様、何かいます」


「ええ、私も今捉えたわ」


 ふたりは湿った岩場を慎重に進んだ。

 すると巨大な蛇が蠢く音がする。


「大蛇?」


 次の瞬間、女の悲鳴のような叫びが聞こえ女が、いや上半身が女で下半身が蛇の魔獣が現れた。


「ラミアだ!」


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