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131『2度目のボス戦』

「今度はラドもやってみる?」


 昼食の後、ボス部屋の前で佇むふたり。ジェラルディンがラドヤードを見上げている。


「前回は私が一切合切やってしまったでしょう?

 お供が前回と一緒とは限らないけど、どうかしら?」


 前回はオークロードだった。


「そうですね。

 久しぶりに頑張ってみましょうか」


 ラドヤードがとても嬉しそうに笑っている。

 そして手をしたバスターソードを握り直し、扉を押した。



 前回はジェラルディンが一瞬で収納したため、一歩も動かなかったボスとそのお供だったが、ラドヤードがバスターソードを構えると、オークロードが次々と襲いかかってきた。


「甘い、甘いぞ!」


 まずは横薙ぎ、そして逆袈裟。

 刃渡りだけで2mはあろうかというバスターソードを軽々と振り回し、真っ二つに切断していく。

 あっという間に10匹のオークロードが屠られて、あとはボスのレッサードラゴンを残すだけだ。


「ついでにボスもどう?」


「よろしいのですか?」


「欲しければまた来れば良いのだもの。

 ……何よりもラドがとても楽しそうだわ」


「では、お言葉に甘えて」


 たとえレッサーといえどドラゴンである。

 到底ひとりで対峙するものではないのだが、ラドヤードは嬉々として向かっていった。

 それからの展開は眼を見張るものだった。

 レッサードラゴンの吐くブレスを、振り回す尾を避けながら、強靭な鱗に向かってバスターソードを振り下ろし少しずつダメージを与えていく。

 それが徐々に、首筋に蓄積し始めたとき、突然ラドヤードの動きが今までと違ったものとなり、レッサードラゴンの一瞬の隙を突いて直線的に突っ込んでいった。


「これで最後だ!!」


 叫びながら懐に入ったラドヤードが、上段の構えから一気に振り下ろしていく。

 ジェラルディンから与えられたバスターソードは首を守る鱗に負けず、肉をも断つ。

 ボスであるレッサードラゴンが断末魔をあげて斃れ伏すまで、実際かかった時間はあっという間だった。


「見事だわ!ラド。さすがは私の護衛ね」


 ジェラルディンは拍手をしながら讃えている。

 ラドヤードは自分が、仲間に裏切られて左手を失ったとき以来ようやく冒険者に戻れた事を自覚出来たのだ。


 ボス部屋で屠ったすべての魔獣を収納して、ジェラルディンたちは現れた階段を降りて21階層に向かった。


「この先は初めての場所ね。

 様子を見ながら進みましょう」


「そうですね。

 あの連中もそうそう簡単に突破できないだろうし、普通に進んだらいいと思います」


 その日、ジェラルディンたちは23階層へ降りる階段の手前で野営することにした。

 いつもの夕食の後、そこでラドヤードは話し始めた。


「俺は……主人様に買ってもらえるまでは、あの怪我もあって生きる事を諦めていました。

 生を疎んで、この世のすべてから眼をそらして、もうどうなってもいいと諦めていたとき、ご主人様に買い上げていただいて……あまつさえ腕を治していただいて、新たな生をいただいたと思っていました。

 そして以前のことには蓋をして、平気なふりをしていたんです」


 ジェラルディンはうんうんと頷いている。


「でも、今日俺は気づいてしまった。

 自分がどれだけ理不尽な目にあって、どうしてそれを我慢しなければならないのか。

 あの時俺は、討伐中にミスをしてヤバかった仲間を庇って、あんな事になった。

 それなのに依頼の失敗の責任をかぶせ、俺の全財産も装備も武器もすべて持ち逃げするなんて、今更ながら怒りが湧き上がってくる!」


 ラドヤードは、今までジェラルディンが見たことがないほど凶悪な顔つきをしていた。


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