126『ダンジョン内、5日目ボス戦』
ジェラルディンは知らされていなかったが、第20階層では通称 “ ボス戦 ”がある。
これは、ダンジョンでは常識なのだが決まった階層には特別強い魔獣がいて、それを倒さない限り先の階層に降りることができなくなっていた。
ちなみに横入りを防ぐため、一グループが戦闘に入ると扉が閉まって、外からは開かなくなり他者は入れなくなるようになっている。
ちなみに冒険者がボス魔獣に敵わないとなった時、敗走することは可能である。
そして戦闘が済むと……これは冒険者が勝っても負けても一定の時が経つと次のグループが挑戦できるようになっているそうだ。
ちなみにボス戦が混み合ったことなど今まではない。
20階層を進みながら、その事についてラドヤードから説明を受けて、ジェラルディンはなるほど、と頷いた。
ダンジョンとはそうして冒険者を淘汰していくものなのだと納得したのだ。
「ではご主人様、行きますよ」
かなり広い階層を突っ切り、これも通称 “ ボス部屋 ”の前に着いたジェラルディンはラドヤードにそう尋ねられた。
ラドヤードはジェラルディンを降ろし、自分の身の丈ほどあるバスターソードを手にしている。
「ええ、よくってよ」
ラドヤードの手が扉に触れると、まるでそれ自体が意思を持つように左右に開いていく。
そして漆黒の闇の中蠢くものの気配を感じた。
「ライト!」
ジェラルディンの生活魔法【ライト】がボス部屋全体を照らし出す。
そこには今までの階層とは桁違いの魔獣が、お供のオークロードを10頭従えて、ゆっくりと立ち上がった。
「レッサードラゴン」
レッサーと言えどドラゴン種である。
それほどの巨体ではないとは言え、10m近くはあるだろう。
ここまでの情報を得られていなかったのか、ラドヤードはジェラルディンを退がらせ、バスターソードを持つ手に力を篭める。
だが、ラドヤードの身体の後ろから顔を覗かせたジェラルディンは至って普通だった。
「対象補足、位置確定……収納」
ラドヤードは一歩も動かず、ましてや剣のひと振りもなく、ジェラルディンの収納魔法ひとつでそこにいたレッサードラゴンとオークロードの集団は一瞬で消えた。
「ちゃんと死んでいるか、見てみる?」
普通はそれなりに怖がるものだろう……
だがジェラルディンにはまったくそのような素振りはない。
ノーアクションで現れた魔獣の骸に近づき、初めて目の当たりにしたレッサードラゴンに触れていた。
「これは色々使えそうですね。
ボスと言うものはギルドに提出しなければいけないものなのかしら?
出来れば素材として保存しておきたいのだけど」
「そんな決まりはないですよ。
このレッサードラゴンはご主人様のものです」
「まあ嬉しい!
それにしてもダンジョンとは得難いものですね。
さらに下層へ行くのが楽しみになったわ」
一方ラドヤードは拍子抜けしている。
こうまであっさりとボス戦が終わってしまうと何というか、虚しい?
「ではご主人様、あちらの階段を降りてみましょうか」
先ほどまでレッサードラゴンなどがいた場所の奥に階段が現れている。
「え?
ここを降りたら帰りはどうするわけ?
上がってきたらまたボス戦をするの?」
そのあたりがダンジョンの不思議である。
「いえ、どうやら21階層から階段を昇ると、20階層に降りてきた時の階段に出るらしいのですよ」
「何それ、意味わからない」
ダンジョンとはそういうものなのである。




