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123『ダンジョン内、1日目』

 早朝からダンジョンに潜ったジェラルディンたちは、初回と同じように浅層を駆け抜け、体感では夕刻には9階層に到着していた。


「ラドヤードに抱えてもらって進むと早くていいわ」


「主人様の探査によって魔獣を避けて通れるのが大きいですよ」


 2人にとって浅層に分布するレベルの低い魔獣などに用はない。

 浅層と呼ばれる階層では、今まで出没していたのがスライム、角ウサギ、飛び鼠、スモールウルフ、ケイブバット、大ミミズ、目なしトカゲだったのが10階層からはゴブリン、コボルト、オークなどの人型魔獣や大型のケイブウルフ、全長3メートル近い岩トカゲなどが発現する。


「主人様、今夜は10階層に降りる階段の間近で野営をしたらどうかと思いますが……いかがでしょう?」


「私もそれを考えていたの。

 ほどほどなところを見つけて、ゲルを出しましょう」


 その後、ラドヤードは9階層も駆け抜けて、階段がすぐそばに見える場所までやってきた。

 やはりそこは誰もが同じ事を考えるのだろう、すでに10人ほどの冒険者が焚き火を囲んでいた。

 それを認めたラドヤードは、そっと道を外れて大岩だらけの空間を回り込み、彼らの死角になる場所にゲルを出すことにした。


「彼らはおそらく、野営は2晩目ですね。

 ギルドが発行しているダンジョン地図には推奨進行速度が記されているのですが、そうなっていますよ」


 もちろんかなりの数の冒険者は、この10階層にも到達出来ない。

 やはり貴族以外が魔法を使うことの出来ない世界では、物理攻撃には限界があるのだろう。



「ゲル自体に結界を付与する事が出来るようになったので、少しくらいはいいと思うの」


 そう言ってジェラルディンが取り出したのは赤ワインのボトルだ。


「主人様、それは……」


「ラドはそれほど弱いわけではないでしょう?」


 異空間収納から出されてくるのは、まずはスペアリブのオーブン焼きだ。

 しっかりと付けダレがしみ込んだ肉を焼いた、どちらかと言えば男の料理と言えよう。


「これは全部ラドにあげるわ。

 ね?お酒が欲しくなるでしょう?」


「そんな上品なものじゃなくて、俺はエールでいいです」


 ジェラルディンの顔が笑顔でほころんだ。


「了解よ。

 冷えたエール、味わってちょうだい」


 ジェラルディンは自分用のハンバーグを出して食事を始める。

 収穫時期は完全に外れているが、彼女の好物のホワイトアスパラガスのバターソース。

 プレーンなロールパンでソースまでいただき、ジェラルディンは食事を終える。

 ラドヤードは久しぶりの酒でリラックスする事が出来た。




 先ほどラドヤードが見つけた、10階層へと向かう階段の前で野営していた冒険者たち。

 彼らは3日かかってここまでたどり着いたパーティーと、4日目にようやくたどり着いた見た目ボロボロのパーティーである。

 そのうちの1人、斥候職の男があたりを見回っていて、大岩の向こうに立派なゲルを見つけ、びっくりして皆の元に戻っていった。

 彼らはいずれも、ジェラルディンたちが軽く通り抜けてきた浅層……第5〜6階層で群れとなったスモールウルフ30〜50頭に襲われて散々な目にあっていたのだ。

 消耗した彼らは藁にもすがる思いでゲルを訪れたのだが……結界に阻まれて触れることもできなかった。


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