117『鍛冶屋のドワーフ』
ダンジョン都市は、厳冬期になっても雪が降り積もらない限り普段の生活が維持されている。
これはダンジョンに潜る冒険者が一定数居るため、その彼らが必要とする【武器屋】【防具屋】【雑貨屋】【食料品店】が普段通り営業しているからだ。
そう、ダンジョン都市の雇用は冒険者たちの活動によって支えられていた。
ナナヤタ不動産を辞したジェラルディンたちは、今日はダンジョン直下の町をそぞろ歩いていた。
この町の特徴のひとつである多層構造で、そこに住む住人ははっきりと分けられている。
一層は、冒険者向けの宿や店舗に加え、その装備を製造、手入れをする店が並んでいた。
「今まで討伐してきた盗賊の武器や防具なんかがずいぶんたまってきているのよね。
対価は求めないから引き取ってもらえないかしらね」
「そうですね。
鋳つぶして再利用する事が出来そうなのは……自前の鍛冶場を持ってそうな、あのあたりの武器屋でしょうか」
ラドヤードはその冒険者としての生活、体験からそれなりの眼を持っていた。
「そう、では参りましょうか」
少々建てつけの歪んだ、開きにくい扉を無理やり力で開けて、素早く周りを見回したあと、ジェラルディンを先に行かせたラドヤードはまた、力づくで扉を閉めた。
「御免! 誰か、おられるか?!」
店のカウンターには店員の姿は見えない。
店の奥からは槌を振るい金属を鍛える音が響いていた。
「お仕事中のようですわね。
どうしましょう……他のお店に行ってみましょうか」
「そうですね。
俺の勘では、こういう店は大抵当たりなんですが」
「しょうがないですわ」
ラドヤードが再び建てつけの悪い扉に向かおうとすると、突然奥から小さな影が飛び出してきた。
「ちょちょちょっとお待ちを!
所用で奥におりました。
お客さん、どのようなものをお探しですか?」
小柄なジェラルディンよりさらに背の低い少年が、慌てて近寄ってきた。
ラドヤードがさり気なく間に入る。
「いや、俺たちは最近この町にやって来たんだが、ここまでの旅の間に手に入れた武器を処分したいんだ」
「どのようなお品でしょうか」
玉石混淆なまま、ジェラルディンは店内の空いた場所にとりあえずひと山出してみた。
「うわぁーっ! うわー!
どうなってるんですか、これ!」
おかしな話だ。
商売をしているならアイテムバッグなど珍しくもないだろうに。
ジェラルディンはそう思いながらもうひと山追加する。
「店先で何騒いでやがるんだ!
静かにしろ、この馬鹿!」
ようやく奥から姿を現したのは、ずんぐりむっくりのドワーフだった。
「お、客なんて珍しいな。
いらっしゃい、見たところ買い取りか?」
「親方、お客様にはもう少し丁寧に」
「構いませんわ。
ごきげんよう、親方さん。
旅の途中で手に入れた武器がたまってきたので、少し手放そうと思ったのです。
ほとんどは鋳つぶして再利用になると思いますが、引き取っていただけるでしょうか?」
「見てみんことにはなんとも言えんが……どれどれ?」
のっそりと近づいてくる姿を改めて見てみても、やはりドワーフのようだ。
鉱山地区などではよく見るそうだが、ジェラルディンは初めて会った。
「お嬢さん、ドワーフははじめてかい?」
もじゃもじゃの髭だが、鍛冶場での仕事に邪魔にならないように、それなりに整えられている。
「はい、はじめてお会いしましたわ。
ルディンと申します。よしなに」
「俺は奥の鍛冶場で主に武器を作っているバルトリだ。
こいつは助手兼店員のポリ。
さて……そいつを見せてもらおうか」




