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114『ダンジョン内にて【銀狼の咆哮】』

 以前のスタンピード以来の再会に、親交を温めたふたり……クリスティアンの方は親交以上のものを心に秘めていたが、ようやく気分を高揚させたジェラルディンに心残しながら王宮に引き上げていった。

 その頃すでに王宮から冒険者ギルドにある依頼がもたらされていて、その依頼はギルドに設置されている特別な魔導具を使って国内外のギルドに広がっていった。

 もちろんクメルカナイのギルドも例外ではない。

 ギルドではもうすでに詳細を掴んでいて【銀狼の咆哮】の潜伏しているダンジョンには次々と依頼を知った冒険者が向かっていた。

 ジェラルディンの祖国の王宮から出された依頼、それは【銀狼の咆哮】の捕縛もしくは討伐である。



 その【銀狼の咆哮】だが、宿を追い出され代わりの宿を取ることが出来ずに、寒さから逃れるためにダンジョンに潜っていたのだが、何の準備もなく野営したので皆寝起きが悪い。

 この夜の最期の見張りである斥候のリリは朝食のための湯を沸かしつつ、周りの気配を探っていた。


「!?」


 その、僅かに空気が動いた気配に気づいた時、リリの喉元から矢の先が生え、声ひとつ上げる事なく地面に倒れ伏した。

 その物音に気付いたのはリーダーのヤルドムンドで、まだ鎧をつけていないままテントから飛び出した。


「何かあったのか? っ!! リリっ!」


 倒れ伏すリリの上半身にはすでに血溜まりが広がっている。

 首の後ろから生えた矢が、何が起きたのか如実に表していた。


「リリっ! リリィーっ!」


 なぜこんな事になったのかさっぱりわからない。

 ヤルドムンドの悲痛な叫びに、あとの連中も……バルバルを除いて、転がるように飛び出してきた。


「うわぁーっ! リリっ!!」


 ボイドが抱き起こしたリリの亡骸は血に塗れ、その中で生気のない見開いた目だけが何事かを伝えようとしているようだ。


「何でこんな事に……

 この矢はゴブリンアーチャーやオークなんかの物じゃないよな?」


 特徴的な矢羽根の意匠はダンジョン都市で有名な専門店のものだ。


「冒険者の持っていた武器をあいつらが使う事は良くある。

 とにかく警戒は怠らないようにしよう」


 前夜の深酒のせいでまだ眠りこけているバルバル以外の3人は素早くこの場を離れる支度を始める。

 蹴り飛ばされたバルバルがテントの中を転がって、ようやく目覚めた彼は罵り声を上げた。


「この野郎! 何しやがるんだ!」


 そして自分の声が頭に響いたバルバルはこめかみのあたりを押さえて蹲っている。


「そんな事してる場合じゃないぞ!

 早く支度しろ! 置いていくぞ」


 いつもは温厚なドルイドに怒鳴られて、バルバルはびっくりして飛び上がった。

 慌ててそのあたりに散らばった己の装備をかき集め、身につけていく。

 もうその頃にはテントが取り払われ、ボルトのアイテムバッグに収められていた。


「!! リリ?!」


 そしてようやくリリの無残な姿に気づいて腰を抜かしてしまった。


「何なんだよ、これはーっ?!」


「背後から突然襲われたようだ。

 殺った奴はすぐにここを離れたようで、今は気配はしない」


「とりあえず、早くここを離れよう。

 嫌な予感がする」


 ボルトの勘は嫌な方に当たる。

 彼らはリリの亡骸に毛布を被せて、装備の装着もそこそこにその場を離れていった。


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