表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

104/314

104『ダンジョン都市へ』

 鉱山地区の隔離は解けていないが、あちらのギルドから鑑定士を派遣してもらい、まずは教会近くのスラム地区から感染者がいないか探索を始めた。

 おそらく普段の状況から、自ら孤児院を訪れた女の子を除いて、孤児たちと関わるものが少なかったことから可能性は低いとされている。


 スラム地区といわゆる下町とは簡単な造りだが塀で区切られていて、出入り口は数カ所である。

 少なくとも下町側からの入場者はチェックされていたのでその関係から捜査していったようだ。

 もう元は絶ったのであとはていねいに捜索して行くだけだ。

 この時点でこの件はジェラルディンの手から離れ、彼女らはこの先の旅に備えて市場へと向かった。

 ようやく旅を再開出来る、ジェラルディンはそう思っていた。



「ルディン殿。

 先ほど領主様から早馬がございまして、この度のこと誠に感謝しておりますゆえ、お礼を申し上げたいと仰っていて、ぜひ領都にいらして欲しいとの事です。いかがでしょうか」


 いかがでしょうか、と言われてもこれはほぼ強制だろう。

 一応領都へも向かうつもりなので時期を決められなければ問題ない。

 そのように返事をして代官屋敷を後にしたジェラルディンとラドヤードは、中庭のゲルの中で出立の準備を始めた。



 テュバキュローシス事件も一件落着し、数件の感染はあったが7日後には完全に終結宣言が出され、ジェラルディンたちも自由に出発出来るようになった。

 この間ジェラルディンは影空間と侯爵邸を行き来し、王宮にもこの度の顛末を伝えていた。


「でもかなり予定が狂ったわね。

 とても領都にはたどり着けそうにないわ……確か途中にダンジョン都市があったわよね?」


「はい、ただ領都へ向かう街道からはかなり外れます。

 どうなさいますか?」


 もう冬は目前に近づいている。


「どこかの中小都市ではただ家に籠るだけでしょう。

 ダンジョン都市なら厳冬期でもダンジョンに潜る事が出来るはず。

 そのあたりを確かめてから、そろそろここから発ちましょう」



 代官や警備隊の面々に見送られて、ジェラルディンたちはようやくラルケの町から旅立つことができた。


「さすがにこの時期になると、日差しが翳ると冷えるわね。

 ラド、大丈夫?」


 彼はジェラルディンよりずっと薄着だ。所々には素肌を晒している。


「もう今日はこのあたりで野営をした方が良いかもしれませんね。

 ……雨の気配がします。

 明日はどうなるかわからないので水はけのよい場所を選んでゲルを出しましょう」


 森の中での野営は慣れている。

 なるべく水平になるようにゲルを設置し、携帯用魔導ストーブを出して暖をとる。

 夕食は具沢山のクリームシチューとチーズを埋め込んだロールパン。

 ジェラルディンには十分な量だがラドヤードのために燻製ハムを分厚く切り分け、スパゲティサラダを出した。

 今夜は、比較的酒精の少ないエールもサービスする。



 ジェラルディンたちがダンジョン都市【クメルカナイ】にたどり着いたのは、それから20日後の事だった。






 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 最初に確認された感染者の母子は、ジェラルディンたちが出立したあとラルケから派遣された火魔法士の手によって “ 浄化 ”されました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ↓貴族しか魔法が使えない、平民との結婚すると魔法が無くなるのを大前提にすると錬金術や薬学も相当進歩はしてないと見ていいよね? だとすると中世ヨーロッパの前期辺りかな?民間療法が医療として認め…
[一言] 死病、不治の伝染病なのでウィルス拡散防止で火魔法は正しい・・・のかな? ただその親子目線でみると悲劇だわぁ(;O;)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ