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101/314

101『捜査』

 屋台での昼食を終え、次は市場へと向かったジェラルディンは、その商品の豊富さに目を見張った。


「今は収穫時期ですからね。

 こちらは規模の大きな町なので農作物が運び込まれてくるのでしょう」


「では尚更、早々に決着を着けなきゃいけないわね」


 とりあえず初期の調査は代官に任せてある。

 地理に明るくないジェラルディンたちが闇雲に走り回ったとしても、得るものは少ないだろう。

 それよりもジェラルディンの関心は新鮮な野菜や収穫したての穀物に向いていた。

 そして目に付いたものを手当たり次第に購入していく。

 ある店では雑穀のキヌアを見つけて、大量に買うことが出来て喜んでいる。

 芋類も充実していて、ジェラルディンの調理に対する意欲を刺激した。


「落ち着いて料理がしたいわ」


「主人様……」


 実は当初の予定から、ジェラルディンたちの旅程は遅れ始めている。

 迷宮都市か、最悪でも領都に着きたいと思っていたところが、この分ではどれほど足止めになるかわかったものではない。


「早々に決着をつけた方がいいわね」


「この地は代官殿もですが、領主殿がしっかりしておられるようですから一両日中にも動きがあるでしょう。

 主人様が直接お出ましになる事はないかと」


「町人に対して、思い切ることが出来ればいいのだけど」


 このテュバキュローシスの患者は中期に至ってしまうと、もう手の施しようがない。

 隔離することしか出来ないのだが、生きた病原爆弾のようなものを生かしておく理由はないのだ。


「目先の病人と、それらから感染するだろう罪のない町人……

 さて、ここの為政者はどれだけ非情になれるのかしらね」



 その、ラルケの町の責任者である代官の動きは早かった。

 この日の昼時点で感染者である母子の家は捜索済みであって、めぼしい成果を得られなかった捜索隊はその耳目を交流関係に向けていた。

 そこで浮き上がったのは母親の仕事関係だ。

 実はこの母親は新たに、裕福な商家に奉公に上がる事が決まっていて、この度の旅は自分の実家に娘を預けるためのものだった。

 捜索隊の関心はその商家にも向いたが、結局何も手掛かりは掴めなかった。

 翌日、今度は娘の行動の方に目が向く。

 彼女はこの町を離れるに至って、知り合いや友人に挨拶に回っていた。

 そこに着眼した捜索隊は子供の知り合いと侮る事無かれ、細かく訪ねて回っていたそのとき、どちらかと言うと下町の、スラムに近い地区にある教会とそこに付属する孤児院にたどり着いた。



 代官屋敷の中庭のゲルでジェラルディンはくつろいでいた。

 今宵はダンジョン産のミノタウロスの焼肉をするので、一緒に来た乗り合い馬車の乗客に声をかけた。

 今はラドヤードとともに冒険者パーティーの面々がミノタウロスを解体している。

 その肉をタレに漬け、鉄板で焼きあげてそして皆が舌鼓を打っていた。

 いつもは静かな代官屋敷の中庭が、喜びに溢れた声で賑わっていた。




 そして翌日、事実が明らかになる。


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