四天王?キース#01
「とりあえず戻すから、頑張ってきなさい」
「あ、その前に少し聞きたいことがあるんだが」
「なに?」
明らかに面倒くさそうな表情をしながら見てくる女神に対し話を続ける。
「俺の魂を切り離したあいつは誰なんだ?」
「知らないわよ」
予想外の答えが返ってきたことに少し大げさに肩を落とす。
「その手に持っている本でなんでもわかるんじゃねぇの? というか、あの世界のことならわかるんだろ? 女神様なんだろ?」
「わかるわけないじゃない。馬鹿じゃないの? なんで女神だったら世界のことすべてわかるって思うのよ」
何故そこまで言われないといけないのか、若干の苛立ちを覚えながら堪える。
「やっぱり駄女神だったな」
「なによ、だめがみって」
「期待した俺が悪かったって意味だよ」
あまり納得していない顔をしながらも、隼人を戻す準備に入る。
何を言っているのかはわからないが、唱えが進むにつれて光に包まれていく。
「じゃあね」
「おぅ、またな」
簡単な挨拶を交わしたのちに隼人の意識は途絶え、気が付けば目の前に座り込んだライカの姿があった。
時間にしてどれぐらい経っているのかはわからないが、ライカの様子からすればそこまで時間は経っていないようだ。
安堵するライカを尻目に、隼人はあたりを見渡すとキースの姿を捉える。
「お前は一体誰なんだ? どうして俺に仕掛けた」
キースは膝をつき、改めて挨拶をする。
「突然の無礼については謝らせてもうらうよ。僕は四天王の称を頂いているキース」
すでに四天王という言葉には驚くことはないが、以前ベルザから聞いた話を思い出す。
魔王の下には四天王と言われる、人物がいるということ。
ただし直属の部下ではなく、力を持った種族の代表が魔王を慕っているというだけで、強い主従関係があるわけではない。
命令を聞くも聞かないも、それぞれの意思となる。
四天王はここにいる竜族のライカをはじめとして、餓狼族のカイル、蛇族のデューヌ、魂魄族のキストリン。
キースという男はベルザの話では出てきていない。
しかしライカに確認をしても、目の前の男は間違いなく四天王の一人だという。
仮にその話を信じたとして、今回の目的は不明だ。
それを改めて問いただすと、軽い口調で話し始めた。
「僕は魔王様に興味が湧いてね」
「どういうことだ」
「僕は魂を視ることが出来るから、あなたが本当の魔王様じゃないこともわかっている。でもあなたのその魂にはすごい惹かれるものを感じることが出来た。魔王という混沌に魂を染めようとしている一方、その核は秩序の光を放っている。一つの魂から2つ以上の色を見るのはそう多くない。だからあなたという魂の強さを見たくて、切り離させてもらったんだ。興味がなければ命が刈り取られていたんじゃないかな」
キースの話すことが理解できたわけではないが、隼人の中で理解ができたこともある。
恐らくではあるが魂という言葉から、魂魄族といわれる特殊な種族であること。
そうなればキストリンという人物はこのキースであるということ。
そして最後に、深く関りを持つのは避けたほうがいいという判断。




