女神との再会
場所は変わり、冥世と呼ばれる空間で男女が話をしていた。
一人は隼人を異世界へと転生させた女神。
それに対して座っている男が一人。
「で、なんで戻ってきたの」
「久しぶりの再会なのに冷たいな。それがさっぱりわからないんだよな」
対峙して話していたのは隼人。
頭を掻きながら苦笑いをしている。
「というか、ここって初めて来たあの世だよな。ポンコツ女神もいるし」
「貴方、口の利き方を覚えたほうがいいわよ」
「あぁ~、悪い悪い。魔王城に転生をさせた女神にそっくりだったからさ」
「ぐぅっ!」
痛いところを付かれ、苦虫を噛み潰したような表情を見せる女神。
一つ咳ばらいをして話を戻そうとする。
「まぁ、多めに見てあげるわ。それでなんで戻ってきたの?」
「気づいたらここにいたよ」
「ふぅ、ちょっと待ってなさい」
女神はどこからともなく一冊の分厚い本を取り出しページをめくる。
少しして何かに納得をした様子を浮かべる。
「貴方、魂を切り離されているのね」
「魂を切り離す? それって死んだってことか?」
「正確には死んでないわ。知っている言葉を使うとすれば幽体離脱みたいなものよ」
「幽体離脱ってあの?」
「あくまでも例えの一つで、実際はそれとはまったく異なるわ」
そのあとも魂と肉体の切り離しについて説明をしてくれたが、複雑すぎる内容で隼人は理解できなかった。
「ただ長時間そのままでいれば、体が魂を拒んで本当に死んでしまうわ」
「それは困るな」
「貴方、この短期間で変わったわね」
「まぁそれなりに苦労してきたからな」
隼人達にすれば数える月日は長くも、女神にとっては短いのだろう。
また一つ納得した表情をして、パタンと本を閉じて言葉を続ける。
「魂が離れた場合だけど、本来であれば現世を彷徨いながら、肉体に戻れるかどうかが意志の強さによって決まるわ。大抵は魂が切り離されたことすら気付かずに、本当に死んでしまうケースがほとんどなんだけど、なぜか貴方は意思もあれば魂としても本来の姿を維持している。そもそもこの場所に来ていること自体がおかしいのだけれど」
「素晴らしい女神さまのご加護のおかげかもしれないな」
少し馬鹿にしたようにそんな言葉を投げかける。
「それもそうね。今回は私が肉体に戻してあげるわ。ただそう何度も私が手を貸せるわけじゃないから… ってなによ」
鼻高々に喋る女神の姿を少し呆れた表情で見つめる。
それに気付いたのか、少し語尾を強くする。




