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魔王で始まる異世界生活  作者: 野薔薇 咲
Act.02~竜帝:ライカ編~
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魔力の存在

 それにしてもベルザの言っていた通り忠誠の高さは本物だ。


 それもすべては先代の魔王達の賜物だろう。


「あとは移動手段か」


 辺りが海で囲まれている以上、船は必要になるだろう。


「魔王様と私は飛べるけど、ベルザは飛べないもんね」


「いや、俺も飛べないぞ」


「…?」


 ライカが明らかに発言に対しての疑問を抱いている顔をしている。


「そういえば魔王様、魔力は戻られていますか?」


「魔力?」


「魔王様の魔力なら、私のように翼がなくとも飛べるはずだけど」


 つまりは膨大な魔力によって普通なら空を飛べるらしい。


 ただ魔法なんて使ったこともないし、使い方もわからない。


 なにせただの人間である。


 手元にある異世界の物と言えば、女神からもらった首掛けの小さな短剣のみだ。


「これはもしかしたら一大事かもしれませんね」


「魔力まで?」


 非常に危ない流れを感じる。


 魔力もない記憶もない、無力の魔王は本当に魔王であろうか?


 これが逆の立場であれば慕って付いてくるだろうか?


 強さを元に慕われているのであればそれはない。


「待ってくれ、確かに使い方は分からないが、教えてくれたら思い出せるかもしれない」


 悪あがきをしてみる。


「記憶障害の一部で使い方が分からなくなってしまっていると考えれば、確かにそうかもしれませんね」


「それじゃ、魔力は残ってて使い方がわからない…?」


「試しに私の言うとおりにして頂けますか?」


 ベルザはそういうと、手のひらを上にして広げる。


「掌の中心。その部分に魔力の流れを感じながら集中させてください」


「こ、こうか?」


「そのまま炎をイメージしてもらえれば」


 ベルザの掌から炎が生まれる。


「この世界は精霊王によって元素が管理されております。火の魔法であれば火の精霊、水であれば水の妖精の力を借りることになります。魔法を使う際は、術者の魔力と引き換えに精霊から力を借りることになります。使いたい魔法の属性をイメージしてもられば、精霊たちがそれに反応して集まって具現化します。もちろん、使う魔法のイメージよっては莫大な魔力を消費することになりますので、注意は必要になります」


「ねぇベルザ…。魔王様が…」


 ベルザの説明を横に必死に集中しイメージをするが一向に炎が生まれない。


「い、いや待て! ほら見てみろ! 掌に水が付いているだろ?」


 炎が出ない焦りで生まれた手汗を堂々と見せつける。


「これは別の手段を考えないといけませんね…」


 そういうとベルザは歩き出し姿を消した。


「……」


「……」


「…ライカ?」


 ライカが下を向きながら何かをつぶやいている。


「そんな、魔王様が力を失っている…?」


 たまに顔を上げてこちらを見てはまた下を向く。


 その瞳には美しさはなく、現実逃避をしている。


 このままでは魔王としての尊厳を失ってしまう。


「魔王様」


 そう時間が経たないうちにベルザが戻ってくる。


「これをお使いください」


「これは…?」


 ベルザが指輪を取り出す。


 シンプルなシルバーリングに小さな赤い石が埋め込まれている。


「べネスリングのレプリカです」


「べネスリング?」


「その昔、賢者が作り出したといわれる、莫大な魔力を秘めているリングです。そのリングに封じ込まれている魔力を使えば、世界の半分を消すことが出来るといわれています。ただ、いつからかオリジナルはその存在を消し、現在はレプリカしかありません。レプリカと言っても、リングに埋め込まれているリコリスに魔力が宿るので、それを介して魔法を使うことが出来ます。現在は石自体が希少ですので、レプリカとはいえ入手は困難ですが」


「そんな希少魔石よく持ってたわね。しかも加工済みだなんて」


「備えは必要ですので」


「これで俺は魔法が使えるのか?」


「試してみてください」


 先ほどのように試してみると、驚くぐらいにあっさりと炎がでた。


「すげぇ… 熱くもないし、不思議な感覚だ…」


「魔王様の魔力が戻るまでは、このリングで代用をしてきましょう。ただ使える魔力はせいぜい中級クラスまでです」


「でもなんで今回はこんな風になっちゃったんだろうね」


「おそらく今までが特殊だったのかもしれません。それに今回、記憶を失ったことも関係しているのかもしれません」


 本来は勇者として転生をしてきて、あの女神のせいで魔王城に召喚されたからなんて言えるはずもない。


 隼人は二人の会話を意識的にシャットアウトすることにした。


「改めてだが移動方法を考えたい」


 話の筋を元に戻す。


「ただ知っている通り、記憶がないから二人に行路は考えてもらいたい」


「大陸と離れている分、移動は海か空となります」


「私は空で問題ないんだけど、ここまでも空で来たし」


「海路で行くとなるとどれぐらい時間が掛かるんだ?」


「一週間ほどです」


 急を要するわけではないが一週間は長い。


「ん? そういえばライカは竜族なんだよな? 竜族っていうのはみんなライカのように人の姿をしているのか?」


「そういうわけじゃないよ。人の姿になれるのは限られた力を持つ者だけ。その力は先天的だったり、同族を殺し奪ったりして手に入れる後天的なものもある。私は先天性のもの」


 ライカは少し表情を曇らせる。


「その力は絶大なものです。そのため、仲間同士での殺し合いや、他種族から命を狙われることもあります。ライカ様はその事態を酷く嫌っております」


 ベルザが耳打ちをしてくる


「その力は竜族だけのものではないのか?」


「もちろん、竜族だけに伝わる力です。ですが、その力を得ることが出来ると考えられ、ドラゴンを討伐しようとする不逞な輩が絶えないのも事実です」


 力を持つからこその弊害ということだろう。


「もしドラゴンの姿に戻れるのなら、ライカに乗せてもらうってのはどうなんだ?」


「私の背中にのる?」


「魔王様。ドラゴンの背中に乗ることがどういうことかわかりますか?」


 漫画やゲームでよくみるからという理由以外にはない。


「いいよ」


「ライカ様」


「ただ、魔王様とはいえ例外じゃないよ。この約定は双方の合意が取れた時点で撤廃はない。例えそれが、記憶を失っていたとはいえ」


「どういうことだ?」


「魔王様。ドラゴンの背中に乗るということは、ドラゴンがその者を主と認めたということになります。つまり主従契約を結ぶということです」


「それって…」


「そう、つまり簡単に言えば私と力比べをしようってこと」


 隼人の中で全てが繋がる。


 ゲームで召喚獣とかと契約を結ぶ際によく見る、力を示せっというものだ。


 それを背中に乗せてというだけで起こってしまった。


 そもそもなぜライカに突然、火がついてしまったのかわからない。


「一体なんでこんなことになったんだ? さっきまでライカだって普通だったじゃないか」


「竜族はとても誇り高き種族です。魔王様が記憶をなくされているとはいえ、遠回しですが主従契約の申し出をされてしまいました。ライカ様はこの申し出に対して、どんな状況でも受けなければなりません。断ることや、相手を諭してこの状況を変えるようなことがあれば、退いてしまうということになり負けを認める事と同義ですから」


「面倒くさいな!」


「この戦いで少しでもお力が戻ることをお祈りします」


 ベルザはもう受け入れ状態だ。


「何を言っても、もう取り消せないよ」


「『乗せてくれ』と『いいよ』のやり取りだけで決まるなんて不条理だぞ!」


 何をいっても現状を変化させることは難しい。


「さぁ、魔王様。始めるよ!」


 ライカの周囲に風が巻き起こり、目つきが変わる。


 隼人は可能な限りの戦闘態勢を取り、動きに備える。

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