ルクアとクィル
カーテンをくぐりしばらく進むと少し広めの部屋に着く。
クローゼットやテーブル、椅子など、生活をするための家具が一式飾られており、そのどれもに金の装飾が施されている。
部屋の奥には大きなベッドが置かれており、その前にハビエルは立っている。
どうやら誰か寝ており、その人物に話しかけているようだ。
「おい、こっちへくるんだ」
呼ばれるがままにベッドに近づく。
ベッドには老人が寝ており、おそらくは前国王だろう。
そうじゃなければこの部屋の豪華さは説明ができない。
「魔王と名乗る坊やよ」
小さな声で話しかけてくる。
「坊やが持ってきたこの文書、クィル様からのもので間違いないのかの?」
「クィルを知っているのか」
「お前、言葉に気をつけろ」
ハビエルが注意をするがそれを制する老人。
魔王というのであれば同じ王として対等と言い、ハビエルを宥める
「クィル様は元気にしておられるか?」
「あぁ元気すぎて困っているがな。爺さんはどうしてクィルのことを知っているんだ」
前国王であるルクア・アントンは昔話を始める。
そもそもクィルとの関係は初代国王までさかのぼるようだ
クィルの容姿に騙されていたが、竜族は長命であるため老いのスピードも遅い。
実際クィルの年齢も知らなければ、ここにいるライカの年齢も知らない。
初代国王と何があったのかは知らないが、受け継がれているのは親交の深い竜族がいるということ。
そのため掲げている国旗には竜の姿をモチーフにした描かれている。
ルクアは幼少期のころにクィルと面識があるようだが、詳しい記憶などはもう薄れている。
ただ非常に優しい人物だった印象は強く残っていたようだ。
「そこにおるのがクィル様の娘さんかの?」
「クィルは私のお母さんだよ」
「母君に劣らぬ、竜族としての気高さを感じる」
「それでどうなんだ?」
少しの沈黙のあとルクアは尋ねる。
「クィル様からの申し出があっているとは言え、すぐに首を縦に振ってやることはできぬ。この国にも民が住んでおるし、過去に魔族に親を殺されたものもおる。その者たちの思いを無下にすることも、国として住む民に不安を与える選択をすることはできん。第一に魔族をすぐに信じて受け入れることが度し難いのじゃよ。それは理解をしてくれぬか」
今は国王の座から降りているとは言え、国を想い民を想う王としての意見。
その思いを踏みにじり強行するほど人の心は捨てていない。




