ハビエル・アントン#01
声からすると男と女。
「穏便に王との謁見を希望だったんだけどな」
「話によればこの国の王様は特殊な人だって言ってたし。それにしても暑いね…」
「まぁ確かに暑いなぁ…」
門番を無視しながら会話をする二人組。
「用がなければここから立ち去れ!」
「いや用はあるんだよ。だから通してくれないか」
「王への謁見許可がないものは通すことが出来ない! それも貴様らのような異能者…」
「あー、もう!」
女のほうがしびれを切らし、相手の声を遮りながら声を上げる。
それに対して怯む門番。
「ただでさえ暑い国なのに、こんなローブずっと着てらんないよ」
「それもそうだな、さすがに堪える」
フレムノは他の国に比べると随一の気候の高さを誇る
そんな中、全身をローブで包めば暑さも自然と増す。
「というわけで通らせてもらうぞ」
ふわりと優しい風が吹き、門番の顔を撫でる。
その瞬間、門番の意識は落ち鉄の防具が音を立てながら倒れる。
片手で城門を押し開け中へと入り、真っすぐ城内を進んでゆく。
騎士たちに取り囲まれるが、次の瞬間には門番同様その場に倒れこむ。
その全員が意識を失っている。
そのまま迷うことなく謁見の間へ入り、王座の前で立ち止まる。
膝はつかず忠誠も一切ない二人に騎士が取り囲む。
それに対して王も立ち上がったり、逃げることもなく頬杖を突きながら見下ろす。
王とは言っても様々な装飾を身に纏うこともしてらず、近しい服装を上げるとすればアラビアンナイト。
そして想像よりも幾分も若い。
「あんたが現国王のハビエル・アントンか。周りに比べて随分と余裕がある王様だな」
「しゃべるな!」
男の声掛けに怒号を上げる騎士。
ただそれを王は片手で制する。
「一体何用でこの国へ来て、我の眼前へ現れた」
「先に言っておくが、俺たちに敵意はないことだけは信じてほしい」
「それならば、名を名乗り姿を見せるのが道理であろう」
「それはごもっともだ」




