動き出す影#02
「今まで何をしていた、ベルザよ」
ベルザの名を呼ぶと、影の中から姿を現す。
「ご無沙汰しております、魔王様」
「お前はっ!」
驚きを示すグレイヴィッツに反して落ち着いてる。
椅子に座る人物は魔王とベルザから呼ばれる。
「魔王様の帰りをお待ちしておりましたよ。今度のお姿はかなりお若いようですね。それにどうやらまだ本調子ではないご様子」
「今更お前の行動を咎めるつもりもない。だが、よく戻ってきた」
「なぜ今回は転生地点を変えられてのですか? あの城には慕う部下たちも待っておられましたよ」
「お前が仕組んだことだろう? だが、この場所もなかなか居心地が良い。力を蓄えるには十分だ」
親しく話す様子はまるで、昔の旧友のような印象さえも感じられる。
「あいにく、まだ力を取り戻すには時間が掛かる。人間たちを滅ぼすのはまだ先になりそうだ」
「それではいかがしましょう」
「奴らを呼び戻せ」
「仰せのままに」
ベルザは踵を返しその場を後にする。
それを追うようにグレイヴィッツも離れ、城を出てたのちにベルザを引き留める。
「待て!」
「どうしました?」
「お前は一体何者だ」
「私は魔王様の側近をさせてもらっているだけですよ」
普段と変わらない表情で会話をするベルザ。
「俺をどうするつもりだ」
「言っている意味がわかりません。貴方が魔王様に対してどのような感情を抱いているのか、ライカ様に接触をして何を企んでいるのか。そんなものに私は興味はありません。私は魔王様の側近として仕事をするだけです」
「あの男は? お前が魔王様と呼んでいたもう一人の男はどうするんだ」
「私は魔王様の側近として仕事をするだけです」
その一言だけを言い残し、ベルザは姿を消した。
残されたグレイヴィッツもその場から飛び立ち城を後にした。




