動き出す影#01
時は少し戻り、隼人がクィルと出会った頃。
ドボル大森林での戦闘から離脱したグレイヴィッツは某所を目指していた。
その場所は地図にすら載っておらず、誰も存在を知らない海の孤島。
誤ってそこに近づいてしまっても、不思議な力によりその場所を通過してしまう。
万物の侵入を許すことのない島。
その島の中にグレイヴィッツは姿を消す。
戦いで負傷した傷はすでに治っており、さすがの回復力を思わせる。
島の中を少し進むと異色を放つ洋館が現れる。
遠目からでも近寄りがたい、一度入ってしまえば戻れなくなる感覚を覚える。
洋館の中は薄暗く、最小限の明かりしか灯されていない。
そんな洋館の廊下を歩いていると声を掛けられる。
「グレイ様、お帰りなさいませ」
「あぁ」
「奥でお待ちです」
メイドのような女性。
だが覇気はなくどことなく不気味さを感じることが出来る。
言われるがままに奥に進むと、ひと際大きな扉が現れ迎え入れるように開く。
さらに進むと一人の人物が椅子に座っており、グレイヴィッツはその前に跪く。
「グレイヴィッツ、戻りました」
「……」
返事はない。
ただその人物から発せられる威圧感は従うに十分すぎる。
「ミストセルラルは壊滅しました」
「…土産まで持って帰ってきたか」
「…?」
椅子に座る人物の発言に疑問抱くグレイヴィッツ。
指をパチンっと鳴らすと、グレイヴィッツに付いていた影の一部が剥がれる。
「これは…」
「かなり特殊な魔法で、影魔法の一つだ。これを使える奴は一人しか知らん」
剥がれた影は解けて消えていく。




