魔王で始まる異世界生活
「つまり色を覚えない限り、この目の力を十分に発揮できないということか」
「その通りじゃな」
いろんな説明を受け少しずつだが理解をしていく隼人。
どんどん人間離れをしていく自分に、なんとも言えない感情を抱く。
「さて、それじゃ明日に備えて身体を休めるとしよう。お主たちには明日から頑張ってもらわないといかぬからな」
簡単な返事をし再び横になる。
ただ眠り続けていたこともあり、すぐに眠るなることはない。
目を閉じこれまでのことを思い出す。
初めてこの世界に来た時のこと。
魔物に囲まれ魔王と担がれたこと。
「(ベルザはどうしているだろうか)」
そんな思いを巡らせる。
ここに至るまでに様々な出会いがあり、衝突もあり困難もあった。
ただ今こうして、この決意をしたことが自身に課せられた使命だと感じている。
女神からの世界を救ってほしいという申し出が、こういう形で進んでいくとは思ってもいない。
平和な世界を作るために、できる最善を選んだ。
「(魔王で始める異世界生活。上等じゃないか。やってやるさ)」
多少の不安は抱きながらも、今の現状を変えるべく各々の思いを胸に行動をする。
都の復旧、自身の成長。
そのどれもが一朝一夕で叶うものではない。
そんな思いを巡らせているうちに、いつの間にか眠りに就いていた。
翌日からクィルの指導の下、隼人とライカは各々に動き始める。
不安の種は大きな動きを見せることもなく幾月の時間が流れた。




