四天王、竜帝ライカ#02
「ライカ様、お久しぶりですね」
「私は別にあんたには会いたくなかったけどね」
正直な話をすれば、こんな子供みたいな見た目で四天王と言われても恐怖心は生まれない。
むしろ喋り方も相まって、近所の子供みたいで可愛いと感じてしまう。
「それで魔王様は?」
「こちらに」
目が合い沈黙に包まれる。
「……」
「……。(怪しまれて…いるよな、間違いなく。だって魔王じゃないんだもん。それにしても可愛いな)」
この続く沈黙が非常に息苦しい。
「今回はこんな感じなんだ」
「ん?」
思っていた反応と違う。
「ふ~ん。今回はどんなお姿なのかと、楽しみにしてきたけど」
ライカの発する言葉に疑問を抱く。
今回というはどういうことだろうか。
「すごい人間ぽい」
「!?」
ただその思考は一瞬で停止した。
人間ぽいという言葉は、今のこの状況では破壊力が大きい。
「ライカ様、魔王様に失礼ですよ」
「それになんかちょっと様子が変じゃない?今までと違うっていうか…」
思った以上に察しがいい。
「ライカ様、それには少し事情があります」
ベルザは説明を始める。
これまでのすべての記憶を失ってしまっていること。
そしてこれからのことを含め説明を行う。
この執事、優秀である。
「なるほどね~ 姿が変わるのは毎回のことだから慣れたけど、記憶がなくなるのは新しいね」
「おそらく、先の戦いの影響もあるのではないかと考えています」
「…。(話が勝手に進んでゆく。このアウェイな感じ少し寂しい)」
だた会話の中で、この世界の魔王のことが少し知ることが出来た。
魔王は目覚めるたびに姿が異なる。
それゆえに、疑われることもなく対応をされている。
ひとまずは命の危険性を考える必要はなくなった。
「それで、魔王様。どうして今回は人間に力を奮う選択をしなかったの?」
「あ、あぁ。力に力をぶつけてもどうしようもないと思ってな」
「それでも人間は身勝手な生き物。私利私欲の為なら手段も択ばぬような、そんな生き物なのに」
それはとても耳が痛くなる言葉である。
「上から抑えようとすれば、押し返そうとする力が発生する。そうなれば、さらに被害は増えてしまう。それに今回はちょっとややこしい話も出てきているようだからな」
「ややこしい話?」
「各国に点在する隠れて暮らしている魔物から得た情報ですが、どうやら裏で何かが動いているのではないか。とのことです」
「なにそれ」
「それはまだわかりません」
「もしその話が本当であれば、状況を変えることが出来るかもしれない」
「それで具体的な方法はあるの?」
「実際に国へ潜ることが情報を集める上ではいいのだが。魔物をそう簡単に受け入れてもくれないだろう」
ライカは腕を組み少し考える。
しばらくして人差し指を立て、言葉を続ける。
「だったら潜り込めばいいのでは?」
「いや、だからそれが出来れば苦労はしないんだよ」
「魔王様、先ほども言ったと思うけど、今の魔王様は非常に人間ぽいの。見た目からしても」
ライカの言葉で気付く。
隼人は魔王として扱われていたから拒絶されることを考えていた。
ただ考えれば元は人間であり、魔王として勘違いされているだけである。
それならば疑われることもない。
ただ、一人で潜るにしても勝手もわからない状態だ。
「私たちも人にカモフラージュするぐらいは簡単だし。魔王様が記憶がないなら、1人で行動するのも難しいでしょ?」
それに加え抱いていた不安要素が全て取り除かれた。
「ライカ」
「なに?」
「最高だな」
「え?」
そうと決まれば行動は早いことに越したことはないだろう。
「よし、それじゃさっそく向かいたいところなんだが。一体どの国に行くのがいいんだろうか」
「情報源でもあるモンス王国かイサンダ王国だとは思いますが、国情から見ればモンス王国がいいと思いますよ」
「なにかあるのか?」
「どの国も共通して冒険者ギルドが存在しているのですが、この2つの国であればモンスのほうが栄えています。ギルドのほうが情報は集めやすいと思います」
理にかなっている情報だ。
「ギルドで情報を集めるってことは、私たちも登録するの?」
「そのほうがいいと思います」
「ところでライカも一緒に来てくれるってことで、問題ないんだよな?」
「そのつもりだよ」
会話の流れでなんなとくそんな気はしていた。