決意#02
「これからどうするつもりじゃ? お主が話しておったことを疑うわけではないが」
口の中に残る渋みを感じながら話し始める。
「この世界が何もなく、平和であるならそれに越したことはない。そもそも今の俺の立場は本来、真逆だからな」
「それはハヤトが勇者ということじゃな?」
ひとつ頷きながら話を続ける。
「ただ俺が目覚めたのは魔王城で、その城で魔王となった。それなら俺が何もしなければ、平和な世界が続くと思ったがそれも違った」
「人の国同士の争いが行われるという話じゃな。そのために魔物が異常数狩られているという話じゃったが、実際は国同士は緊密で争いが起こるなんて考えられる状況ではない、と。そうなるとこの話自体嘘であったということか?」
「あくまでも短期間で、なおかつ局所的な関りだけだから、そう感じた可能性も捨てきれないけどな。ただその中で出会ったのがグレイヴィッツ。あいつはこちらに対して明らかな敵意を示して攻撃を仕掛けてきた。しかもライカの動向を知っている口ぶりだったのも気にかかる」
「あやつがライカに施した封印の開放は、闇雲に精神を破壊しようとしているものではなかった」
少し体制を変えながら隼人は話を続ける。
「もし、人間を襲うのであればグレイヴィッツだけで十分だし、森の中という狭い環境でなくても街を襲えばいいはずだ。そしてライカを狙っていたのであれば、こんな回りくどいことをせずとも好かったはずだ。ただあえてサラマンダの存在を利用したのは、ライカとコンタクトをとるためだったんじゃないかと思っている」
「何のためにそんなことをする必要があるのじゃ」
「ここから先は俺の推測なんだけど。本物の魔王はすでに目覚めているが、何かが原因で姿を現すことができない。そしてグレイヴィッツはその魔王の下にいる」
少しの沈黙が続く。
「もし仮にそうだとしても疑問が多いぞ。お主も知っての通りあやつにとって魔王という存在は、慕うよりも恨むべきものであるはずだ。そうなれば指示に従っておる理由や、今回姿を現してまでライカを襲った理由が不明じゃ」
「これもあくまで推測だが、今回は指示ではなくグレイヴィッツの意思で行ったこと。そしてこれはあいつからライカへ向けた特別なメッセージだと考えられないか?」
「…魔王の下におって、そのような愚行が許されるとは思わぬが」
再びの沈黙の中、焚火の弾ける音をきっかけに隼人か口を開く。




