決着#05
ライカは隼人の姿に意識を移す。
全身ボロボロで血を流し、今にも死んでしまいそうな状況である。
ただそこに一つの違和感を覚える。
「剣が…ない?」
「気付くのが遅いな…」
隼人は指を鳴らすとライカの背後に向けて高速で黒剣が飛んでくる。
その存在に気付いた時にはすでに、黒剣はライカを背中から貫いていた。
「うそ…、なんで…?」
黒剣が飛んできたほうを確認するライカ。
砂煙も晴れそこには小さな弩弓のようなものが見え、その横に閻狐が立っていた。
「即席だがうまく機能してよかった」
ボロボロの体に鞭を打つように立ち上がり、ライカに近寄る。
「初めからこれが目的だったわけ…?」
「そうじゃないと、ライカに素手で立ち向かうわけないだろ」
黒剣はライカの魔力を限界まで吸収を行っている。
すでにライカに魔力は残っていない。
「ちょっと痛いかもしれないが我慢しろよ」
隼人はライカに刺さっている黒剣を引き抜く。
出血はなく傷跡もなく、ただただ魔力だけを吸い取っている。
そのままライカは地面に倒れこむ。
「さぁ、さっきと逆の立場だが、何か言いたいことはあるか?」
「……」
小さい声でライカは何か喋っているが聞き取ることができない。
「どうした? 聞こえないぞ?」
「私の…負けだよ…」
声を震えさせながらそう言葉にしたライカ。
熾烈を極めた戦いは、隼人の勝利で幕を下ろした。
そして隼人もその場で意識を失った。
隼人が次に目覚めたときには、揺らめく火の明るさと弾ける木の音があたりに響いていた。




