新しい力:閻狐#02
『魔力を吸われるってことは隼人にとっては大したことがない事でも、他の人にとっては致命的なことだってあり得る。もちろん隼人はそのせいで通常では魔法が扱えないんだけどね』
過去の思い当たる節を思い出す。
その全てがこの小さな剣によって魔力を吸われていたということだ。
『てことは、お前を手放したら魔法を使えるってことか?』
『そうなるけど… ボクを捨てるの?』
『いや、そんなつもりは全くないしこれからもよろしく頼む』
緊急事態においては剣を置き、魔法で戦うことに切り替えることが出来る。
自身の戦うことが出来る幅が広がったことを認識する。
『それじゃそろそろここではお別れだね。最後に一つ、ボクの名前を教えるね』
手を差し伸べるように隼人に向ける。
『ボクの名前は閻狐。主、隼人の手にする妖狐剣:閻狐に宿りし護手』
『えんこ…』
『それじゃよろしくね!』
壁に寄り掛かった状態で意識が戻り、最初に感じたのは体の痛みだった。
痛みに耐えながら少し辺りを見渡せば、荒れ果てた地で戦う二人の竜族の姿があった。
それに気づいたクィルは牽制を仕掛け、ライカの視界を奪い隼人の近くへ戻ってくる。
「ようやく目覚めたようじゃな」
「身体のいろんな所が痛いけどな」
立ち上がることが出来ないほどの痛みではない。
例えるなら寝すぎた時と同じような痛みと、気怠さが全身を襲っている。
「お主がどうなったのか知りたいかの?」
「いや、なんとなくだけどわかっている」
ゆっくりと立ち上がり、全身の凝りをほぐすように伸びをする。
全身を強くぶつけたとは思えないほどに、身体を動かすのは辛くない。




