隼人と妖狐#01
その途中で陰から見ていたサラマンダに、指示を飛ばす。
「聞くがいいサラマンダ! お主はここから北の地にある、竜涙草を持ってくるのじゃ!」
「『りゅうるいそう?』」
「今の奴らはその存在すら知らぬのか。お主たちのような眼の形をした草が北の地に生えておる。理由は聞かずに持ってくるのじゃ!」
「『わ、わかりました!』」
慌てるように名前と形だけを手掛かりに竜涙草を探しに飛び立つ。
「さて、そろそろ目覚めてもらうぞ」
現実で目を覚ましていない隼人だが、意識の深い部分では既に目を覚ましていた。
『なんだここ、さっきまでクィルと一緒にいたはずだ。真っ暗だが不思議と辺り光はないのにしっかりと見ることが出来る』
暗闇の中で叫んでみるが返事は返ってこない。
ただ無音でその空間には自分ひとりしかないことが理解できる。
一体何が起こったのか、記憶を振り返りながら状況を整理していく隼人の中で一つの答えが出る。
『こっちの世界でも死んだのか? 確かに死んでいても不思議じゃないし、ライカも完全に殺すつもりの一撃だっただろうしな』
妙に落ち着いている自分に驚きながらも、現実を受け入れようとしている。
そうだとしたらこの場所が死後の世界で、何もなく一人だけというのも合点がいく。
納得をしようとする隼人にどこからか声が届く




