目覚めた竜帝#03
気付けば気絶をしている隼人の元へ移動しているライカ。
そのまま再び攻撃を仕掛ける。
しかしそれは届くことなく、寸前のところで止められる。
「…なんで?」
「止めぬか! ライカ、お主は本当にハヤトを殺すつもりか!」
「なんで止めるの? お母さんはこいつが憎くないの?」
「しっかり見るんじゃ! 憎むべき相手は本当にこやつか?」
視線を隼人に向ける。
しばらくすると込められた力が抜ける。
「…そうか」
「やっとわかったか。ハヤトは…」
「お母さんも騙されているんだ」
「なっ!」
身体を捻りライカはクィルを蹴り飛ばす。
防御は間に合わず壁まで勢いよく吹き飛ばされ激突する。
ガラガラと崩れ落ちる壁の中、ふらつきながら立ち上がるクィルにゆっくりと近づいていく。
「目を覚まさせてあげる」
「我が娘ながら恐ろしい力じゃ」
ライカとクィルが衝突するたびに空気が揺れる。
「『一体なにが…』」
入口から覗き見ながらサラマンダは呆気に捉える。
本来竜族の瞳は、どの種族より動体視力に長けており大抵のものは捉えることが出来る。
しかしその眼を持っても捉えることができない。
そんな怒涛の攻撃を的確に捌いていくクィル。
「うぅ…」
「『魔王様、大丈夫ですか?』」
徐々に意識が戻りつつある隼人。
元の世界に比べ、こちらの世界に来てから身体能力は向上している。
それが幸いしたのだろう。




