目覚めた竜帝#02
「ライカ!」
「馬鹿者! 不用意に近寄るでない!」
クィルに制されその場にとどまる隼人。
その場から確認できるライカは何かを呟き、その眼は虚ろで綺麗な黄色い瞳は光を失っている。
明らかになにか様子がおかしい。
「おい、大丈夫なのか…?」
「大丈夫に見えるなら、感動の抱擁でもしてみるか? その身体の無事は保証できはせんが。いまライカは過去の封じ込められた記憶で混乱しておる。しばらくすれば記憶の整理ができるじゃろう」
「それなら待っとけばいいのか?」
「お主に見せた記憶を思い出して、ライカが抱く感情はなんじゃろうな? もし儂が同じ立場であればこうなった恨むべき元凶を、消し去りたいと抱いてしまう。自分をこんな状況に変えた魔王をな」
徐々にライカが呟きが聞き取れるようになる。
「…た…いの? ち……う、私… じゃ… ない。ちがう… ちがう… ちがうちがうちがう違う! 違う!」
ライカはその場で大きく叫び、力が抜けたように下を向く。
ゆっくり顔を上げこちらをしっかりと見据える。
「アンタがわるいんだ」
ライカがそう小さく言葉を発し、気付いた時には隼人のいた場所にライカが立っており、隼人は吹き飛ばされ壁に勢いよく激突する。
「ハヤトォ! 何をしておるライカ!」
「悪い子は全部殺さないといけないんだよ」
向けられた表情はあの時は違う、憎悪に満ちたものだった。
それはクィルが怯んでしまうほど殺意が込められていた。
「まさかここまでとは…」
クィルは隼人の元に駆け寄り安否の確認を行う。
壁が一部壊れ隼人は瓦礫の下に埋もれるように倒れている。
「息はあるようじゃが、これじゃ無理じゃな」
「簡単には殺さないよ」




