ライカの過去#03
場面がまた切り替わり天真爛漫な笑顔を向けるライカが映し出される。
『お母さんどおしたの?』
『ライカ、お前はなにも心配をする必要はない』
『お母さんおケガだいじょうぶ?』
映像に移るクィルの手には先ほどまでなかった傷の痕が確認できた。
手当を行ったのであろう、血が滲んでいる部分もある。
「当り前じゃな。同族殺しを行った子を持つ親が、一族からどういう仕打ちに合うか。ただこの頃からライカを気に掛けてくれる者が現れたのじゃ」
「…もしかして」
「そう、グレイヴッツじゃ。ライカは先の話し合いで一部の記憶に封印を施され、同族を殺したことを忘れさせてあった。同族殺しをしていたとしても、一族の中では力を有するアークドラゴンであり先天性の持ち主だからの。処分は軽く終わったのじゃ。だが周りの視線は変わることはない。しかしあやつの存在によってライカは守られた。それこそ本当の兄妹のように接してくれてな。儂もあやつを自分の子供のように扱った。ただ、そうは長く続かなかった。現れたのじゃ悪魔が」
次に映し出された映像は辺りが火に包まれ、倒れているライカを庇うように守るグレイヴッツとクィルに対峙する一人の男の姿だった。
『さぁ、お嬢さんを渡してもらいましょうか』
『嫌に決まってんでしょ!』
『では無理やりでももらって行きましょう』
映し出されている映像が一気に下がり相手の足元しか見えなくなる。
その映像を見ながらクィルは拳を強く握っている。
このあとの展開は予想ができた。
『く…っ!』
『この魔法を受けていながらまだ動けるのは、さすが竜族で先天性持ちということでしょうか』
さらに強い魔力で押さえつけられ、一切動けない状態になる。
『ん~、そこの白いドラゴンどいてくれませんかね?』
『に…げ…て…』
そこで映像は途切れてしまった。




