世界情勢を知る
転生をして疑われることなく幾日が過ぎ、その間にこの世界の事に付いて様々な知識を得ることも出来た。
この世界は北の国ヘイル、東の国イサンダ、西の国モンス、南の国フレムノ、そして魔王国。
人間国家4つと魔物国家1つの計5つの勢力が存在していたが、現在は魔王亡き後で実質は4勢力である。
各国が大きな力を持っており、一時期は魔王討伐の為に力を合わせていた4大国も、魔王討伐を機に関係は大きく変わってしまった。
ここ最近では、戦争にいつ発展してもおかしくはない状況だともささやかれており、その為に人間よる魔物狩りが行われており資材や物資確保を行っているのではないか、という動きもある。
「魔王様」
「どうした?」
「こちらの資料を」
ベルザが差し出した数枚の紙を手に取りそれに目を落とす。
「これは?」
「先日、魔王様が仰せ付けた人間たちの情報を記したものです」
この世界で初めて文字を目にする。にわかには信じていなかったが、この世界の文字を問題なく読むことが出来る。
それどころか日本語とさして変わらない感覚だ。
「西国のモンスと東国のイサンダの関係が最も緊迫しているようです」
「理由は?」
「人に紛れて生活をしている魔物から得た情報ですが、他国の領地を奪うためだけに争いを起こそうとしているようです」
「人間らしいといえば人間らしい…か」
何処へ行っても人間という生き物は自分たちの得な事しか考えていない。
そのためには他者が傷つこうが、どうなってしまおうが関係はないということだ。
「ただ今回の情報を流してくれた魔物が、少し気になることを言っていたようで…」
「気になること?」
「はい。本当に領地の奪い合いが目的なんだろうか、と」
「どういうことだ。」
「両国は以前からとても良好な関係を築いており、それが突然争いに発展するのは考えにくいと。なにより両国ともに豊かな国情であるにも関わらず、争いを行うメリットが存在しないのです」
「つまり、領地の奪い合いというのはあくまでも表向きであって、裏では違う思惑が動いている、と?」
「考えすぎかもしれませんが、その可能性もあるのではないかという話です」
さすがに行き過ぎた考えであることは違わない。
ただこの世界のすべてを知っているわけでもないし、そういうこともありえるということだ。
「とりあえず一度詳しく調べてみる必要がありそうだな」
「そうですね。…それにしても魔王様」
「どうした?」
「どうしてこんな方法を? 魔物達を守るのであればこんな方法でなくても、良いのではないでしょうか?」
「前にも言ったと思うけど、争うのはなしだ」
「失礼しました」
やはり魔物というのは争いを好む生き物なのだろうか。
「ところで魔王様、あの方達にご連絡はお済でしょうか?」
「あの方達?」
「そのご様子だと、やはりお忘れのようですね。そうではないかと思い、既に手配は完了しております」
「?」
「魔王軍が誇る最強の四天王です」