ライカの元へ#03
「背中を取られる時点で未熟じゃ。実力の差はこれで十分じゃろう。どうも今の竜族の若い連中は頭が固すぎて、種族での決まりに縛られすぎて困る」
必死に振り払おうとサラマンダは体を動かしているが、クィルは一切落ちる様子もない。
それどころが胡坐をかきながら座っている。
「なんであれで落ちないんだ… サラマンダもう諦めて乗せてやれないか?」
周りの木々を揺らすほどに身体を揺らすサラマンダ。
それとは真逆に欠伸までしているクィル。
「『はぁはぁはぁっ… わ、わかりました。今回は特別に魔王様に免じて乗せることとします…』」
隼人もサラマンダの背に乗り、そのままライカの元へ戻る。
ライカを寝かせている洞窟まで戻ると、サラマンダを外へ待機させ中に入る。
クィルはライカの傍に座り、顔を触りながら隼人に問う。
「まずはこの状態になった原因を教えてもらおうかのぉ」
「グレイヴッツというアークドラゴンを知っているか」
クィルは振り向くことなくそのまま話を聞く。
隼人はそのまま話を続ける。
これまでの経緯を全て隠すことなく。
本来であればすべてを話す必要はないが、クィルを信じて話をするにはライカを見る表情だけで十分だった。
「やはりお主は魔王ではないか。それじゃ今度は儂が話をする番じゃな。とはいえ、言葉だけじゃ伝えきらん。お主が包み隠さず話をしたのであれば、儂も包み隠さず全てを教えよう。今から見せるのは紛れもない事実。しっかり見るがよい」
クィルは立ち上がり隼人に向かい合い、そのまま竜眼を利用し隼人に幻術を見せる。
「なんだこれ…」
「これは儂の記憶じゃ。お主には今から竜族の過去を知ってもらう」
初めに見せられた記憶は遥か昔のもの。
ミストセルラルは栄え、ライカが幼い頃のものだった。




