ライカの元へ#01
「そいつは何で王を殺したんだ?」
「それは圧倒的な力を得るためには最適な相手だからのぉ。不思議な話じゃが竜族だけではなく、その種族の王となるものは、地位を得たその時から他を圧倒する力を得る。お主も王としての地位を持つ者であればわかるはずじゃ」
「…それが全く実感がないというか、そもそも魔力も俺はないらしい」
「どういうことじゃ?この世に命あるものすべてに魔力は宿っておるぞ。草木や水、虫や鳥に至るすべてがそうじゃ。魔力がなければこの世界では死んでおるのと変わらん」
「そんなこと言われたってな。竜族や魔力に長けている奴だったら、相手の魔力がわかるんじゃないのか? それなら俺の魔力がないこともわかるだろ」
クィルが歩みを止めて隼人に向き合う。
「(竜眼)」
クィルの眼に魔力が流れ、その眼で隼人に流れる魔力を捉える。
「…ふむ」
「どうしたんだ」
「まず先に言っておくが、相手の魔力を知るためには直接触れ合い探るか、魔力を見ることが出来る眼が必要になる。一目見るだけでわかるようなものではない」
「そうなのか」
「そしてお主にも間違いなく魔力が流れておるぞ。ただ魔王とは正反対の魔力じゃな。穢れておらん」
「それじゃなんで俺は魔法を使えないんだ?」
「勘違いをしてほしくはないが、魔力があるから魔法が使えるわけではないぞ。ただ、お主の場合は別の理由じゃな。その首から下げておる物はなんじゃ?」
「これか?」
隼人は取り出してクィルに見せる。
「ふむ、これは剣か?それにしても小さすぎて、果物を切るぐらいにしか使えそうにないの」
顎に手を当てながらまじまじと確認する。
「少し触ってもよいか?」
「いいぞ」
首から外しクィルが差し出す手のひらに乗せる。
「っ!?」
クィルは咄嗟に手を引き、地面に剣は落ちる。




