王と帝#02
「先王が死ぬ前に、儂を後継者とする命を下したのじゃ」
「え?」
「先王は自身の死期を悟っておった。だからその前に儂に譲ったのじゃろう」
「…殺されたんだよな?」
クィルの身体がピクリと反応し隼人を振り返る。
しばらくの間、視線を交えたのちにクィルが口を開く。
「…お主何をどこまで知っておる?」
「詳しくは知らない。聞いた話と、この都の惨状だけだ」
「そうか」
再び歩き出す。
「その通り、先王は殺された。力を得るために同族に殺されたのじゃ」
「竜族が力を得るために、同族を殺す話は知っている。それによって後天的な力を得ることも」
「…その話を知っておるということは、お主にはドラゴンの知り合いがおるな」
「いるよ。ただクィルもそれはわかっているんじゃないのか?」
「どうしてそう思う」
隼人は先ほどクィルと話をしていた中で抱いた違和感を問う。
「さっき話していた時に、ライカのことを女の子だと知っていた。だけど俺はライカが女の子だなんて言っていない。アンタはライカのことを知っている。」
「なかなか聡明じゃな。その通り、儂はライカのことを知っておる。だからこそ、助けてやると言ったのじゃ」
「……それはライカが特別だからか」
隼人はグレイヴッツの言葉を思い出しながら問う。
「お主はどう思っておる? ライカは特別か?」
「何を持って特別とするのかはわからない。でも大切だとは思っている」
「儂らが抱くライカへの思いも、それと変わりはせん。ただ何を勘違いしたのか、自分は違うと思い込んで一族を離れ、満たされるために力を欲し、王まで殺したアホがおる」
「(…グレイヴッツ)」
「一族の為とは言え、片方に構いすぎたのじゃ。だからその感情が生まれてしまった」




