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王と帝#01
クィルを先頭に出口を目指して森の中を隼人は歩く。
その途中でいくつかの質問をする。
「王は死んだと聞いていたが」
「そうじゃな。王は死んだぞ」
「…でも、クィルは王なんだろ?」
「そうじゃな」
要領を得ない回答を繰り返すクィル。
「そういえば、お主はいつまでその棒を持っておるのじゃ?」
「ん?あぁ、つい持ち心地が良かったってのもあるが、これは特殊なものなんだろ?」
不思議と持ち心地の良い棒を持つと手放したくなくなる。
小学生の時に手ごろな木の枝を見つけて、下校をしていた時のことを思い出す。
「ただの棒っ切れじゃぞ」
「…ん?」
「……」
クィルは振り返り隼人から棒を奪う。
それを両手で持ち半分に折ると、バキッと良い音が響く。
そして半分折れた物を、その場に捨てまた歩き出す。
「ただの棒じゃ」
「…俺の聖剣キノーエダが」
「お主ネーミングセンスないのぉ」
渡されていた棒がなんの変哲もない物というよりも、気に入っていたものがなくなった喪失感のほうが強かった。




