竜族の王、クィル
「さて質問じゃ。お主は何者でなぜこの地に足を踏み入れた?」
「俺は三島隼人。ただの人間だけど、魔王をしている。この地には俺の仲間を助けることが出来ないか、それを探すために踏み入れた」
「お主が魔王?そうは見えぬが嘘はついていないのじゃな」
「嘘を付くとこの棒切れがどうにかなるんだろ?」
「そうじゃったな。なぜこの地に足を踏みいれることで仲間を助けられると思ったのじゃ?」
「この場所は竜族の王がいる場所だと聞いている。それなら特殊な何かがあってもいいんじゃないかと思ってな」
「もしそんなものがあったとして、人間には扱えない代物かもしれぬぞ」
「誰も人間だなんて言っていない」
ここまで一切の嘘を付いていない。
この問答を通して目の前の女性は腕を組んだまま目を閉じ、何かを考えている様子だ。
しばらくしたのちに目を開き最後だと前置きをして質問を投げかけてる。
「本来であれば勝手にこの地に足を踏み入れたことは許されることではない。厳正に罰を受けることになる。知らぬといったところじゃろうが、もしそれを知っていたとしてもお主は踏み入れておったじゃろう」
「何が言いたい?」
「お主はそのライカという娘を助けるのにどこまでできる?」
「やれることならなんでもだ」
間髪を入れず答える隼人をじっと見つめる女性。
隼人自身、ライカの為にここまで言い切ったことに内心驚いている。
しばらくして小さく息を吐き、踵を返し歩き始める。
「よいじゃろう。それなら儂を娘の場所に連れて行け」
「え?」
「儂が助けてやると言っておるんじゃ」
「…助けられるのか?」
「儂を誰だと思っておるのじゃ」
隼人のほうを向きなおし胸を張る女性。
「のじゃロリ…?」
「なんじゃ、それは?」
お互いが疑問のままに顔を見合わせる。
「いや、最初に聞いたらどうでもいいって言ったのアンタだぞ」
「そうじゃったかの?」
「…で、教えてくれるのか?」
「いいじゃろう。儂の名はクィル。竜族の王である」




