絶対的強者#01
サラマンダも状況を察し体制を整える。
「一人で止められる… と?」
「えぇ、足止めぐらいなら余裕ですよ」
ベルザがカイオルに微笑むと現れた鬼は姿を消した。
「…一体何をした?」
「特になにも。ただ少しこの子がお腹を空かせていたようですね」
カイオルの剣を払うように押しのける。
「あの時はしっかり見ることが出来なかったが、やはりその剣は黒残影か」
「物知りですね。ご自慢の国の書物にでも記されていましたか? それとも貴方の師である、ベルンにでも聞きましたか?」
「なぜその名前を。」
「さて、なぜでしょう?」
「…全てを聞き出すとしよう」
再びカイオルの背後に鬼が姿を現すが、そのまますぐに消えてしまう。
「この剣が黒残影だと知ってなお同じ手を使うのは、あまりにも愚策ですね」
「……」
「それとも、名を知るだけでそれ以上は知らないという事でしょうか」
カイオルが飛び退き一旦距離を取る。
「ベルジェ=クリスト」
「……」
「昔、魔王に仕えていた魔族の名前だ。名前以外のすべてが謎に包まれている魔族。実力も姿も知られていない。ただわかっていることは、黒剣を使うという事だけ。姿を現すこと自体が珍しく、あの大戦の時ですら姿を現していないという。一説では既に死んでいるともいわれている。が、目の前にいるお前は誰だ?」
「…さぁ、誰でしょう?」
ベルザが不敵に笑みを浮かべる。
その一瞬でカイオルの血の気が引く。
相手にしてはいけない。
はるか格上、体が危険信号を発している。




