交渉#01
「教える義理はないだろう。それとも受ける依頼でも選んでるのか?」
「うちは金さえ払ってくれれば依頼はこなす。依頼主が誰だろうとそれは同じだ」
「それじゃ受けてくれるってことだな?」
「依頼の内容は?」
「情報収集を頼みたい」
「詳細は?」
「それはまだ教えることはできない。まずは顔を見て話をしよう」
隼人の問いかけに対して再び沈黙が訪れる。
なぜこんなに回りくどい問答を行っているのか、知らない人が見たら気になってしまうだろう。
全てを話して円滑に進めていけばいいのにと。
ただ情報は生き物である。
ましてや情報屋という、情報取扱を生業としてきている相手にすべてを話すのはリスクしかない。
それを隼人は理解している。
時間にして数十秒だろうか?
それとも数分立っただろうか?
暗闇が時間経過を狂わせる。
「私は貴方たちの依頼を受けない選択肢だってある」
「払えば受けてくれるんだろ? 矛盾しているな」
「それは対価が見合っている前提条件をクリアしている場合のみ。いまの貴方たちは何一つクリアしていない」
「わかった。ただこっちもアンタの事を信用できないと、話をすることはできないな」
「それなら依頼が成立しないだけ。帰って」
「まぁそう急かすなって。報酬に金貨10枚を払う」
金貨10枚をわかりやすく話せば10万円ほどの価値だ。
この金額が適正なのかは知らないが、おそらく相場を大きく超えていることは予想できる。




