拒む者#01
「嘘ではないのだろうな。こうしている間にもサラマンダからは敵意も殺意も感じる事がなかったからね」
「信じてくれてなによりだよ」
「それにしても、ライカちゃんが竜族か。薄々普通の人間とは違うことは感じてはいたが、まさか…。それでなぜ君たちは一緒に旅をしているんだい?」
「いろいろあるんだよ」
「…まぁいいか。それじゃサラマンダの討伐をさせてもらう」
カイオルが剣を抜きサラマンダのほうを向く。
「ちょっと待てよ。今の話を聞いてどうしてそうなる」
「それとこれは別だからだよ。あくまでも今回の依頼はサラマンダの討伐。謎の人物との交戦ではない」
「サラマンダに敵意はないんだぞ?今回の件だって利用されていただけだ」
「依頼はサラマンダの討伐だ。敵意の有る無しは関係ない」
一切聞く耳を持たぬカイオルに対し、苛立ちを覚える隼人。
「そうだよな。国の犬どもは飼い主の命令に尻尾振って喜んで、褒めてもらうためならどんなことでもするよな」
「何の真似だい?」
隼人の手には魔力から形勢された剣が持たれている。
「ライカが必死に守ろうとしているものを奪われてたまるかよ」
「ハヤト様がそのおつもりなら、私も共に道を歩みますよ。」
「…邪魔をすると?」
「邪魔もなにも俺たちは国の犬じゃないんでね。依頼が失敗しようが関係ない」
「……冒険者の三名の内二名は交戦中に負傷。そのうち一名は消息不明」
「なんの話だ?」
「今回の依頼での報告だよ。」
カイオルはこちらを振り向く。
その眼には魔力が宿り、闘技場で見た様子とは明らかに異なる。
「残念だけど、ライカちゃんは竜族だ。人間に交じって魔族が生活するなんてことは、平和のためにあってはならない」
「本気かお前」
「僕はいつでも本気だよ」
「…魔王様」
ベルザがカイオルに聞こえないように話しかける。




