路地裏の酒場#01
現状確約はできないのは理解できていた。
ただ善処するということだけでも、変わっていく足掛かりには十分なりえるだろう。
そうなればこちらとしても人手が欲しい所ではある。
「爺さんはとりあえず貴族への対応を考えて進めてくれ。くれぐれも獣人たちとぶつかり合おうなんて、考えだけは止めてくれよ」
「聞かせてくぬか。お主になんのメリットがあるのだ?」
「メリット? そんなの考えて動いてねぇよ。俺は俺の目的のためにやってるだけだ。だから争いなんてすんなよ」
隼人はそういうと王宮を後にした。
獣人側が動き出したら争いは止められない。
クラウディアに目立った動きはないことを考えれば、まだ猶予はあるのだろうか。
それとも獣人街の獣人たちは巻き込まず、自身の勢力だけで事を起こすつもりであれば、猶予はないかもしれない。
「考え事かな?」
隼人の目の前にキースが姿を現す。
「キースか。探し物は見つかったのか?」
「まぁね。魔王様の探し物は見つかった?」
「今から探すところだ」
「情報屋のことだよね」
相変わらず魂を覗き見しているのだろう。
「あんまり人の魂を土足で踏み入る様な事をするなよ」
「なんで? こうすればすぐに相手の事がわかるのに」
「そんなのじゃ、本当に相手の事を理解することなんてできないぞ」
「??? 僕は魔王様が感じていることだったり、そういったものはこの目で見て理解することが出来る。それなのに相手の事が理解できないってどういう意味?」
「そのうちわかるときが来るといいな」
隼人は道を逸れて裏道へ足を運ぶ。
裏道は栄えている本通りとはことなり雰囲気がガラリと変わる。




