正義のため#02
「爺さんの言いたいことは分かる。ただやり方が違うって言ってんだ。守るための力の振り方を間違えているって言ってんだ。争いに出る人間たちは民じゃないのか? 兵であれば守る必要がないのか? そうじゃないだろ」
「兵は国を守るため、民を守るための力なのだ。それを兵たちもわかっておる」
「それじゃ爺さんのいう通り、力に対して力をぶつけたとして、そのあとはどうなる? わだかまりはなくなるのか?」
「理想じゃ国は救えないのだ。お主も王ならわかるだろう」
「それでも…」
隼人は発しようとした言葉を飲み込む。
この言い合いはお互いに間違ったことは言っていない。
だからこそ交わることもない。
「……この問題の発端は獣人の隷属化だ。それを一部の貴族が行っているのは知っているんだろう?」
「耳にしたことはある」
「それをなくすことはできないのか?」
「一度、ルクア様が貴族を呼び出し問うたことがあるが、どの貴族も認めはしなかった。抜き打ちで兵士たちに確認をさせに行ったこともあるが、確かに屋敷にいた獣人を確認することはできたが、そのどれも従事しているだけという報告じゃった。もちろん獣人たちの口からも同じ回答だった」
「まぁいうわけないだろうし、獣人へ口止めもしているだろうな」
「結果としてじゃが、その事実を咎めることができてらん」
黙認しているわけでない。
咎めるための証拠がないから今日まで放置されている。
「もしその証拠があれば、その貴族たちを止めることはできるか?」
「環境を変えていくことはできるだろう。たださっきも言った通り口を割る者は存在しないだろう」
「いや、変えることが出来るということを約束できるなら、情報はこちらで揃える。約束できるのか?」
「…善処しよう」




